一般的に冬になると睡眠時間は夏に比べて長くなります。また冬になると、朝起きるのがつらいというケースはよく聞かれると思います。それとは逆に、慢性的に睡眠時間が短いという「ショートスリーパー」の人も存在します。
では、ここで問題です。ショートスリーパーとロングスリーパーは、どちらがより健康的と言えるでしょうか。
まず深夜に働く人の場合、仕事柄、週に数日は短時間睡眠を余儀なくされますが、このような睡眠のとり方をショートスリープとは言いません。
ショートスリーパーとは医学的に「短時間で睡眠を完了できて仕事をこなせる健康な人」と定義できます。私が受験生だった時代に「四当五落」という言葉がありましたが、これは「受験生は4時間睡眠なら合格、5時間寝たら不合格」という意味でした。とはいえ平均睡眠時間が3~4時間だと脳の疲れが取れずパフォーマンスの低下を招くこともあります。
睡眠時間が6時間という人もいれば8時間という人もいるように、人によって異なりますが、睡眠時間にはある法則があります。
睡眠時は浅い眠りの“レム睡眠”と深い眠りの“ノンレム睡眠”を繰り返しますが、この1セットは約90分間隔です。そこから「睡眠時間」は、90分の倍数で考えます。3時間睡眠で知られるナポレオンはわずか2セットで睡眠を完了できたわけですが、この睡眠セットが3回ならば4時間半、4回ならば6時間となります。ここまでがショートスリープと定義されます。逆にこのセットが7回ならば10時間半となり、セット回数7回以上=睡眠時間10時間半以上はロングスリープと言っていいでしょう。
また、両者のパフォーマンス面を比べると、ショートスリーパーは昼間テキパキと動けます。さらに、睡眠時間が短い分だけ活動時間を長く使うことができます。特に起床から8時間までは脳が活性化するため、新たな企画も浮かびやすくなるなど、アクティブに動けるようになります。
逆にロングスリーパーは起きても眠さやだるさを感じる場合が多々あります。性格も内向的な人が多く、生産性も明らかに高まりません。就寝時間を30分ずつ遅くして起床時間を一定にし、目覚めたら太陽の光を浴び、夕方までに15分ほどの仮眠を取る、夜食を控えるなどのくふうで“ノーマルスリーパー”となれます。「9時間以上寝ている人は認知症になりやすい」との説や「寿命を縮める」との説にもあるとおり、寝すぎは健康的とは言えません。つまり、ロングスリーパーは「眠り方が下手」と言えます。寝ては起きてを繰り返すダラダラ睡眠であり、寝ているようで寝ていないのです。
睡眠時間が短くとも睡眠効率により健康を保つことができることを考えると、ショートスリーパーのほうがより健康的と言えます。寝すぎてしまう人は日常生活のサイクルを意識的に変え、7時間半~9時間の睡眠時間を目指すようにしていきましょう。睡眠で意識すべきは「睡眠効率」=「上手な睡眠方法」です。
床に入る3~4時間前に夕食をとり、そのあと風呂に入って体温を上げるといいでしょう。また、就寝時間を「入眠の黄金時間」である22~24時にして、寝る前にお酒やタバコ、コーヒーなどを控える、昼間に運動をして体を疲れさせる、昼食後に仮眠をとる、食事は野菜中心にして大量にとらない、などで濃密な睡眠をとれるようになります。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。