一方、今や平昌五輪で最も金メダルに近いと言われているのが、女子スピードスケートの小平奈緒(31)だ。だがここにきて、赤信号がともっているというのだ。スケート関係者の話。
「1月20日に小平のライバルながら親友でもあった住吉都選手が自宅で死亡していたことが発覚。いまだにそのショックから立ち直れていないのです」
しかも住吉選手の急死が公表されたのが、結団式当日の1月23日だっただけに、会場に集まった報道陣の質問も競技以外の部分に集中したのだ。
「周囲からは『これで金99%の可能性が狂った。どこまで精神面のダメージを払えるか』とか『金が取れなければ、その理由は明白』と心配の声があちこちから上がっていた。重苦しい雰囲気に包まれる中、気丈にも小平みずから親友の死の話をし始め、取材陣は一様にホッとしましたが‥‥翌日が平昌入り当日だっただけに配慮に欠けるとの声もあった」(前出・スケート関係者)
メンタルのみならず、小平の飛躍的な成長は、ソチ五輪後に選んだ“第2の故郷”オランダ留学に他ならない。スポーツジャーナリストは、
「オランダの強さの秘密は、大学など研究機関と組んで、科学的なアプローチのもとでの練習だけでなく、環境的にもスケート施設が充実。天然のリンクがいたるところにあるだけでなく、室内リンクが多数あり、幼少期から鍛えられる。結果、オフの期間に自転車競技も取り入れて強化し、科学的な練習が奏功した。またバランスや体の使い方を鍛えるため、古武術からヒントを得て一本歯の下駄を履いてスケート姿勢を保つ独自の練習や、ヨガなども積極的に導入しています」
女子500メートルは小平と五輪2連覇中の李相花(イサンファ)(韓国)が抜け出しているが、2強に次ぐ存在と目されているのが郷亜里砂(30)。今季は W杯3位が3度で、自己ベストを昨季から1秒近く伸ばすなど、表彰台に手が届く位置につけている。
30歳で初の五輪出場という遅咲き。山梨学院大学時代から同世代で上位の成績をあげていたが、受け入れてくれる実業団が見つからず、卒業目前にようやく山口県の国体強化選手の話が決まった。その後も地元・北海道の企業所属を経て、現在は練習環境に恵まれない愛媛県のスポーツ専門員として地元クラブに籍を置きながら、長野や北海道を中心に練習を重ねている。
「夏場の練習で尻回りの筋肉が2センチほど太くなったそうです。これによってスタート時の加速が向上。代表チームで短距離を指導するオランダ人のデルクスコーチも『メダル圏内の実力がある』と期待をかけています」(五輪担当記者)
スケート界屈指のムチムチな尻回りも注目だろう。
今季のW杯で世界記録を連発する団体追い抜きの主要メンバーとして金メダルを狙うのが高木菜那(25)・美帆(23)姉妹。ともに過去1度ずつ五輪を経験しているが、最初に脚光を浴びたのは妹の美帆だ。10年のバンクーバー五輪に史上最年少の15歳で出場。その時現地で応援したことで姉の人生も変わった。「こういうところで戦いたい」と高卒後に強豪・日本電産サンキョーに入社。トップレベルの選手たちの競技姿勢に触れることで、前回のソチ五輪代表の座をつかんだ。皮肉なことに、そのソチでは美帆が落選。今回の平昌で、ようやく2人そろっての出場がかなった。
「最も身近なライバルであり、仲間でもある2人の存在が日本の最大の武器になりそう」(スポーツ紙記者)
小平の活躍に影響を受けて練習嫌いを改めたと言われる美帆。小平とともに出場する1000メートル、1500メートルでは両者のワンツーフィニッシュが見られるかもしれない。