ウインタースポーツの祭典である冬季五輪だが、練習場所の確保や長期遠征などで活動資金がかさむこともあり、郷のように所属先やスポンサー探しに苦しむ選手がいるのも現状だ。スノーボード女子の鬼塚雅(19)もその一人。昨季は所属先がなくフリーで活動していたが、17年7月に高級旅館などを運営する星野リゾートと所属契約を結んだ。最大のサポートは、星野リゾートが運営する福島県内のスキー場に鬼塚用のプライベート練習場を設けたことだ。
「鬼塚は熊本市生まれですが、5歳で競技を始めて以降、たびたび福島県内の星野リゾートのスキー場で練習しており、その縁で契約につながりました。本人も『五輪前に国内で練習環境が整ったので、安心して練習に打ち込めた』と話している」(五輪担当記者)
今季のW杯ではスロープスタイルで2位が2度、ビッグエアで2位が2度と好調を維持。2種目での金メダル獲得には、福島で磨いた横3回転に縦2回転を加えた大技「バックサイドダブルコーク1080」の成功が鍵を握りそうだ。
フリースタイルスキー・エアリアルの田原直哉(37)も厳しい環境と闘ってきた。体操選手として日本代表入りも嘱望されていた田原がフリースタイルスキーに転向したのは25歳の時。右肩筋断裂のリハビリ中、テレビで偶然エアリアルを見たのがきっかけだった。
しかし、フリースタイルスキーを取り巻く環境は甘くない。田原も例外ではなく、所属企業はない。全日本スキー連盟から強化費は出ているものの、住居は友人所有の物件に無料で間借り。民宿でのアルバイトなどでわずかばかりの収入を得ている。
「合宿や遠征などの活動費はほぼ自己負担なので、インターネットの公式サイトでサポーターズクラブの会員を募り、活動資金を集めています。趣味の釣り道具や腕時計なども換金していて『もう売れるものがない』と話していました」(前出・五輪担当記者)
異色の苦労人は五輪本番でどんな滑りを見せてくれるのだろうか。