感動や物議が多発したパリ五輪が終了し、ワイドショーやバラエティではメダリストたちをスタジオに呼び、もう一度思い出に振り返る番組が目立っている。
そして、ここにきて世に拡散されているのが、3年前の東京五輪とパリ五輪を比較し、今さらながら「東京は良かった」と日本での体験を絶賛する、各国の選手やジャーナリストの言葉だ。
特に食事や空調などの「生活面」がパリと東京では格段に違ったことが、すでに大会中の選手の発信で明らかにはなっていたが、閉幕後に自国に戻った米国の記者が東京と比較してパリにはガッカリしたとニュースサイトで赤裸々に感想を漏らしたことが再び話題となっている。
米ニュースサイト「ビジネス・インサイダー」のマンシーン・ローガン記者は、東京五輪を「アメージングな経験だった」と語り、東京が効率的でクリーンで人々が親切だったことで、パリにはさらに期待したと説明。しかし残念ながら、パリでは東京での経験に近づくことすらなかったと失望した心境を綴った。
記者いわく、パリではホテルの部屋にエアコンが付いていないことはもちろん、メディアに配られる試供品はコカ・コーラの水筒のみ。東京ではリュック、タオル、ノートパッドにペン、クッションなどがあったというから、その差は歴然としている。
ところが、このニッポン絶賛する記事が拡散されて喜ぶ日本人があふれるかと思いきや、意外な反応が多いと週刊誌記者が苦笑いする。
「最近はYouTubeなどで、ホルホル動画と呼ばれる日本絶賛ものが大流行ですが、それに飽きてきている人が多い。今回の記者の記事はそれではありませんが、実はパリのやり方が正しかったのではと感じる日本人がとても増えています。というのは、結果的に東京五輪は汚職と談合まみれで赤字総額は2兆3713億円。そこまでの無駄金を使って『おもてなし』する必要はなかったという考えに変化していますね。日本が頑張りすぎ、外面が良すぎ、その負担がすべて都民や国民にのしかかったではないかと、コメント欄は冷めた意見ばかりです」
確かに、パリは最高気温34度など暑かったとはいえ、東京の湿度の高い不快な暑さとは違う。その意味では、東京における選手村やホテルのエアコンは必須であることは間違いないが、選手たちの間で、選手村で無料で提供される食事が大絶賛される光景は「実は必要なかった」という声にもうなずける。
「パリ五輪は衛生面、環境面で不評でした。ですが、観光地としての価値は少しも落ちていません。むしろ、日本人のフランス旅行の予約が大幅に増えていると聞きます。結局、東京もお金をかけずに新たな箱モノも建てる必要はなかったし、記者には水筒を渡すだけでよかった。ついでに言えば日本にはコンビニもたくさんあるし…と、それでも来たい人は来るというわけです。都民の意見はいちいちうなずけるものばかりですね」(前出・週刊誌記者)
「お・も・て・な・し」を誘致の殺し文句にしてしまった、当時の五輪関係者たちはどう感じているだろうか。
(北山陽向)