この非礼にも映る川田の対応には、彼なりの理由があるという。栗東のベテラン記者が明かすには、
「川田には譲れないポリシーがある。『騎手は命がけの仕事。誰にでも言うべきことは伝える』ということだ。昔は乱暴な騎乗をした若手の胸ぐらをつかんで説教をしていたほどで、よく煙たがられていたよ」
しかし最近は、若手への指導にも変化が現れた。
「区切りの勝利のセレモニーの時、後輩たちがプラカードを持って祝福するじゃない。でも川田の場合、500勝以降はいつもJRAの女性職員だった。ところが昨夏、小倉で1100勝した時は、荻野極(20)が駆けつけて『川田さんのフェアな騎乗を見習いたい』と話し、周囲を驚かせていたよ」(前出・ベテラン記者)
とはいえ、川田を巡るトラブルは数えきれないほどあるという。
「昨秋、奥村武調教師の馬で出遅れて、4角で挟まれながらも4着した時、戻ってきた川田に先生が『あれがなければ4着以上あったかな?』と馬の様子を尋ねた。すると『あんなもんだと思います』と言い残して、ディスカッションを拒むように立ち去った」(美浦トレセン関係者)
そんな無愛想ぶりは取材陣にも及ぶ。スポーツ紙記者も、やや困惑気味に、
「『記者の方は文字があればいいんでしょ』と、平然と言い放ち、短いコメントを用意するだけ。それを知らない若い記者が質問すると、まるで九官鳥のように同じコメントを繰り返す。我々マスコミの先には競馬を支えているファンがいるという思いが希薄だね」
ただし、これにも「川田流の理由がある」と、前出・ベテラン記者は解説する。
「彼なりのこだわりのルーティーンがあって、それが誤解を生む。例えばレース後の談話にしても、自分のタイミングで取材に応じたり、調教師や馬主に報告する。そのタイミングを知らずに質問すると、機嫌が悪くなる。その流儀を相手に伝えれば済むことだが、『僕のことをよく思わない人は多い。結果で見せていくしかない』などと言ってばかりいるから、不協和音が絶えないんだよ(苦笑)」
一方、田辺の応対も個性的だ。馬の評価について、リップサービスで持ち上げることは決してない。
「重賞で人気になる馬に初めて調教に乗った際は、その馬のどこかしらをホメるものですが、田辺から返ってくる言葉は『普通っすね』が多い。でもこれはまだいいほうで、『あんまりよくないっすね』とか、『この馬、本当に人気になるんですか?』なんてこともある。なので人によっては『生意気だ』とか『俺の馬に不満があるのか』となってしまう」(前出・スポーツ紙記者)
例えば、共同通信杯で4着したゴーフォザサミットについての評価をスポーツ紙デスクが明かす。
「最終追い切りがいい感じだったという報告があり、記者を田辺のところに向かわせると、『まだ休み明け感が抜けない』と、そっけないコメント。でもレースはその言葉どおり行き脚がつかず、追走にも余裕がなかった。現場の記者が田辺のジャッジを高く評価するのもうなずけます」