騎乗馬は常に人気となり、とりあえずこの2人の馬券を買っておけばいい、とまで言われる。そんなルメールとデムーロの猛威に敢然と挑み、ケンカ遺恨を制して下剋上を果たした男──。令和の新リーディング騎手を奮い立たせた「8つの導火線」とは何か。
「今年はルメール(39)、デムーロ(40)の2強を抑えてリーディングを取るかも」
まだ3分の1のレースが終わっただけなのに、競馬サークルからそんな声が聞こえてくるほど、川田将雅(33)が絶好調だ。重賞7勝を含む58勝で、2位のルメールに16勝差をつけてリーディングを独走(4月28日現在)。勝率(0.276)、連対率(0.462)も断トツだ。4月21日の京都・比良山特別で内側に斜行。4月27日から5月4日まで騎乗停止となったが、現在のペースを維持すれば、ルメールの3連覇阻止はきわめて現実的と言わざるをえない。
この下剋上覚醒に恐れをなしたのが、デムーロだった。川田と同じエージェントと契約していたが、4月初め、他のエージェントに変更してしまったのだ。
「勝利数が川田のように伸びていかなかったからです。『どうして俺にもっといい馬を回してくれないのか』という不満によるもの。『川田ファースト』が嫌になったのと、焦りやイラだちもあったんでしょう」
専門紙トラックマンがそう言うように、2番手の扱いで、川田の後塵を拝する屈辱。いわば川田の実力と勢いに屈服し、逃げ出した形なのだ。
川田とデムーロといえば、思い出される「事件」がある。17年7月29日の小倉2R(未勝利・ダート1700メートル)。スタートして1コーナー内側に各馬が集まると、川田騎乗のミアグレイスがデムーロのブレイブウォリアーの進路を塞ぐ形に。ところがデムーロは進路確保のため激しく抵抗し、川田を肘打ちしたあげく、どなったのだ。よろける川田──。
「一歩間違えば大きな落馬事故につながる異常な行為だった。デムーロには過怠金10万円が科せられ、二人には遺恨が生じたと言われます」(競馬ライター)
そもそもデムーロは「制裁王」と呼ばれるほど騎乗ぶりが荒いため、調教師や馬主が敬遠しがちな一面を持っているが、川田はケンカ騎乗の制裁王を遁走させることで、リベンジを果たしたことになる。
ちなみに、デムーロが今ひとつ波に乗れない理由として、さる競馬サークル関係者はこんなエピソードを明かしてくれた。
「昨年冬に離婚し、元妻と子供はイタリアに帰ってしまったそうです。京都に住むデムーロがとあるスナックに入り浸り、その店のホステスとつきあっていることは競馬サークルではよく知られた話。デムーロは『○○○だで~』という変な話し方をするでしょ。あれはホステスが日本語を教えたんです」
「だで」といえば名古屋弁のなまりであり、京都の一部でも話されるというが‥‥。
「そのホステスとの関係がうまくいっている時は競馬も調子がいいですが、そうでない時は全然乗れない。私生活が直接影響を与えるタイプなんです」(競馬サークル関係者)