──それでは、今季の順位予想をお願いできますか?
江本 1位から6位まで当ててみろって言うなら、そら無理ですわ(笑)。解説者として毎年やってはいますけどね。結局、ケガ人や急に打ち出すやつのことなんか、今の段階でわかるわけがないでしょう。
野村 難しいね。我々の若い頃から、ずっと言われてる。「天気、経済、野球の予想は難しい」って。
江本 だいたい、予想が外れるほうがそのシーズンはおもしろくなるんですよ。まあ戦力的には広島とソフトバンクが抜けてますけれど、そんなの八百屋のオヤジさんでも言えることですから。というわけで、僕は今年、セは阪神、パは楽天を優勝候補に予想します。
野村 両方とも、俺がいた球団じゃない。
江本 別に監督のことを忖度したわけじゃないですよ(笑)。要するに、1月に星野仙一さんが亡くなられたでしょう。この2チームの人たちは「星野さんのおかげで今日がある」ということをみんな言うから、そこまで言うなら大活躍して優勝で星野さんに恩返しせえよと。ホンマは阪神の優勝予想なんてイヤでしょうがなかったんですけど(笑)。
野村 いいんじゃないの。江本らしさが出た予想だよ。野球は「意外性のスポーツ」って言われるくらいだから、どこが勝つかなんてわからないよ。
江本 そうでしょう。近年では、小川や真中のヤクルトが優勝するなんて、開幕前に誰が予想してましたか?
野村 違いないわ。これは私の持論ですけど、外野手出身に名監督はいないんですよ。外野手出身で日本一になったのは、ヤクルトの若松が最初。最近だと秋山もソフトバンクで2回かそこら優勝してますけど、2回以上優勝したのはあいつだけです。プロ野球80年の歴史が物語ってる。外野手は、試合中に何も考えることないんですから。守備位置に立ってまでイメージバッティングしてるやつもおるくらい、打撃のことしか考えてないんですよ。
江本 “敗戦野手”というのはいないですしね。その日10対0で負けても、自分がヒット3本打ってれば、ニコニコして帰れますから。
野村 どうして球団はキャッチャー出身者を監督にしないのかね。森にしても伊東にしても優勝してるじゃない。うぬぼれを承知で言わせてもらうと、若松も俺の遺産で優勝したんだよ。真中も早々に辞めたけど、当然じゃないですか。
江本 真中、今年から僕らと一緒のサンスポの評論家ですよ。
野村 ホンマか。ライバルやな、俺らの仕事も減るね。
江本 わははは、減りますかね。
──昨季は巨人が11年ぶりにBクラス入りして大きな話題となりました。
江本 そりゃあ、いちばんホームラン打った選手で18本。打線が悪すぎましたよ。2割9分打った坂本はおいといても、他に主軸になる打者がいませんでしたから。
──野村さんから見て、高橋監督の采配はいかがですか?
野村 ‥‥外野手はダメ。
江本 わっはっはっはっ。
野村 無理だよ。一番の理由は、外野手は小さいところに目がいかないし、気づかない。アバウト野球になるんだよ。守備位置のことも考えたらわかるでしょう。味方の背中しか見えない。内野のことを「ダイヤモンド」って言うじゃない。なぜそう言うか? 野球で大事なことは、全部内野で行われてるからなんだよ。
──昨季、CSを勝ち上がって日本シリーズに出場した横浜DeNAにも注目が集まります。
江本 僕は、去年の躍進が限界だったと見て、Bクラスに予想しています。何がいけないかというと、12球団でバントと盗塁がいちばん少ないんですよ。去年のキャンプでラミレス監督は「今季はバントにも対応する」と言うとったけど、結局、変わらなかった。昨シーズン、勢いはすごかったけど、小技を使わないと勝つにも限度があるんですよ。
野村 それ以前に、ラミレスって監督の資質あるの?
江本 手厳しいなあ、そこにツッコミますか(笑)。
野村克也(のむら・かつや) プロ野球史上初の捕手三冠王にして、安打、打点、本塁打、出場試合数のいずれも歴代2位の記録を持つ。南海、ヤクルト、阪神、楽天の監督を歴任し、球界随一の知将として輝かしい成績を残した。
江本孟紀(えもと・たけのり) 70年に東映フライヤーズに入団。翌年、南海に移籍すると野村監督に才能を見いだされ活躍。プロ通算113勝で81年に引退する。92年から参議院議員を2期12年務め、現在は独立リーグ・高知ファイティングドッグス総監督。