芸能

天才テリー伊藤対談「小松政夫」(1)高給取りから一転植木等の付き人に

●ゲスト:小松政夫(こまつ・まさお) 1942年、福岡県生まれ。自動車のセールスマン時代に、雑誌で植木等の付き人募集広告を見つけて応募。約600人の中から選ばれ、64年、植木等の付き人兼運転手となる。役者志望だったことを知ったクレージーキャッツの後押しもあり、「シャボン玉ホリデー」(日本テレビ系)に出演、人気者に。以降、伊東四朗とのコンビで「笑って!笑って!!60分」(TBS系)、「みごろ! たべごろ! 笑いごろ!!」(NET)などの番組で70年代のバラエティ界をリード。「しらけ鳥音頭」など数々のヒット曲やギャグを生み出す。同時に活動の場をドラマ・映画・舞台にも広げ、俳優としても活躍。シリアスからコメディまで幅広くこなせるバイプレーヤーとして欠かせない存在となる。近著に「時代とフザケた男~エノケンからAKB48までを笑わせ続ける喜劇人」(扶桑社)、「昭和と師弟愛 植木等と歩いた43年」(KADOKAWA)などがある。4月22日(日)、福岡県・パピヨン24ガスホールにて舞台「帰ってきたマサ坊演芸会」公演予定。

 淀川長治のモノマネや「小松の親分さん」などのギャグで一世を風靡したコメディアン・小松政夫。最近では付き人時代を描いたドラマがNHKで放送されたこともあって、師匠・植木等との思い出を語る機会が増えている。天才テリーも、その強い絆の物語に耳を傾けた!

テリー あれ、スーツなんて珍しいじゃないですか。

小松 いやいや、テリーさんがおしゃれだから、負けないようにと思って。

テリー アハハハ、何言ってるんですか。

小松 ほんとはラフなスタイルが好きなんだけど、みんなに「いい年の取り方しましたね」なんておだてられちゃって、「じゃあ、それにふさわしい格好もしたほうがいいのかな」と。もう私も76歳ですから。

テリー はー、でも昔と全然変わらないですよ、実感ないでしょう?

小松 そうなんですよ。私の師匠の植木等が亡くなったのがちょうど80で、だいぶその年齢に近づいてきたんですけどね。

テリー 植木さんが亡くなられてもう10年たつんですね。植木さんは、いくつぐらいまでお元気だったんですか?

小松 亡くなる5年前までは、芝居をやっていましたね。私はその芝居につきっきりでしたけど、その時にもだいぶ具合は悪くて、もう普通に座ってるのも大変そうでしたけどね。

テリー 小松さんも自分のお仕事があるのに、大変じゃないですか。やはり「自分がついてなきゃダメだ」と思ったんですか?

小松 というより、ついていたかったんですね。もう階段の上り下りも難しくて、しんどそうでしたから。だから舞台が始まる5分前の合図のベルも「(舞台へ上がるのに時間がかかるから)10分前にしてくれ」と舞台監督さんに頼んだりしました。

テリー まさに師弟愛ですね。おふたりの強い絆といえば、何度も本になったり、ドラマ化されたりするほど有名ですけど、あらためて植木さんのところへ行くことになった経緯を教えていただけますか?

小松 私はそれまで車のセールスマンをしていて、月給は150万円ぐらいあったんです。昭和37~38年頃で、ラーメン1杯40円の時代だから、すごいでしょう?(笑)。

テリー 本当にすごい、エリート中のエリートじゃないですか。

小松 そういう生活を捨てて、ある日、植木の付き人兼運転手募集の広告を見て、面接に行ったわけです。言うなれば弟子入りだから、こちらは「ちょっと踊って見せてみろ」とか、簡単な模擬テストみたいなものがあると思うわけですよ。

テリー 思いますよね。

小松 でも、そんなのは全然なくて。本当に車の運転手が欲しかっただけなんです。そこへいくと、私はもう21歳の社会人だから。

テリー ああ、もう社会に出ているから、ちゃんとした対応ができるわけですね。

小松 他はラフな格好の若者ばかりで、こっちの見栄えはいちばんいいわけです。たぶん、それだけでOKになっちゃったんだと思いますよ。だから、あとで植木からは「おまえが役者志望だとは思わなかったよ」って言われたんですよ、私は、初めからそのつもりだったのに(笑)。

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