テリー 小松さんは、なんで植木さんの弟子になることを選んだんですか?
小松 植木にも同じことを聞かれました。でも、そんなこと言われても、自分でもよくわからない。だから「“こっちがいいか、あっちがいいか”と考えて、こっちに来ました」と言いました。そしたら植木が、「うーん、わからない気がしないでもない。俺も坊主になるかミュージシャンになるか、ずいぶん悩んだけど、こっちがいいと思って来たから」って言ったんですよね。
テリー 小松さんが運転手になった時、すでに植木さんは日本一の人気者ですよね。
小松 そうです、「スーダラ節」の大ヒット後でしたから。私もいろいろなスターを見てきたし、話も聞きましたけど、もう植木はすごかったです。だって有楽町にあった日劇なんて、出口が1つしかないんですけど、そこに学生からお年寄りまで1000人ぐらいが出待ちしているんです。
テリー うひゃー、すごいなぁ!
小松 大変な人だかりで、まともに歩けないんです。で、普通なら女の子がワーキャーなんでしょうけど、植木の場合、おじいちゃん、おばあちゃんたちが出口をジッと見据えてて(笑)。で、そんな中を私が先陣切って「どいてくださーい!」って叫びながら飛び込んでいくんです。
テリー うわーっ、それ、怖いですよね。
小松 ええ、もしかしたら刃物を持った人が飛びかかってきて、ブスッといかれるかもしれないですから(笑)。だから、強行突破で行く時は、いつも必死でしたね。
テリー その頃、植木さんに休みはあったんですか?
小松 ありましたよ。1週間で10時間とか。
テリー ええーっ!?
小松 2日間完徹して、次の日4時間寝て、その次また完徹して、その次の日に3時間寝て、みたいなスケジュールですよね。だから車で移動する時は、植木はいつも寝ていました。
テリー それじゃあ、小松さんも寝る時間がないじゃない。
小松 まぁ、そういうことですね。でも、一切、ツライと思わなかったし、むしろ「こんなにうれしいことはない」と思ってましたよ。私、歩いている人たち全員に「俺、植木等の弟子なんだよ!」って言いふらして回りたいぐらいでしたから。
テリー フフフ、そういうところが、植木さんが小松さんをかわいがった理由なんでしょうね。
小松 私がいちばんびっくりしたのはね、昔、フジテレビの地下の廊下で鶴田浩二さんとすれ違った時なんです。向こうは大スターですから、お付きの人を4、5人連れてやって来るわけです。狭い廊下ですから、こっちは邪魔にならないように壁にペタッと張りついて、挨拶するわけですね。
テリー ええ、こっちはペーペーですもんね。
小松 そうしたら、鶴田さんが「キミが小松政夫か」って声をかけてくれて、「この前、植木さんと仕事をしたんだけど、1時間の昼休みのうち、40分はキミの話をしてたんだよ」って言うんですよ。
テリー うわぁ、そんなの泣いちゃいますね。
小松 泣いちゃいます。しかも、そういうことを言ってくれる人が、他にもたくさんいたんです。だから私は「生涯この人について行こう」と思ったわけです。一事が万事、そういう人でしたね。