もちろんこの生涯にわたる特別職は、イチロー自身にとっても大きなメリットがあったことは確かだ。
「現役メジャー最年長野手としてイチローは事あるごとに『50歳までは現役』を標榜してきた。殿堂入りも有力視される誇り高きイチローにとって、その“公約”を実現できない事態だけはなんとしても避けたかった。とはいえ、このまま成績不振の醜態をさらし続けることは美意識に反する。そのため特別補佐として選手のままフロントに残るウルトラCの折衷案を呑まざるをえなかった」(メジャー担当デスク)
また、この苦渋の決断には、弓子夫人の意向も深く関与しているという。
「TBSのアナウンサーだった弓子夫人は、日本のような衆人環視のないアメリカでの生活をエンジョイしている。しかも、野球に専念する夫に代わって、200億円とも言われるイチローの資産を運用し、複数の不動産を管理するなど、実業家としても成功している。現役にこだわるイチローはここ数年、日本の球界復帰も視野に入れていたが、弓子夫人の『一生アメリカで暮らしたい』との希望を受け入れて、アメリカに骨をうずめる決意をしたといいます」(現地ジャーナリスト)
さらに、この生涯契約をきっかけに、かねてからの野望にも火がともったという。
「実は、イチローは以前から『いずれは指導者(監督)で』という野望を掲げていた。かつて、任天堂がマリナーズを保持していた時代は、任天堂の故・山内溥オーナーがイチローに将来の監督含みでマリナーズ入りを決意させた経緯もある。今回、イチローみずからが日本球界復帰の道を絶ったことで、選択肢はメジャーの監督に就任することにしぼられたことになる。『日本人メジャー初』という冠にこだわるイチローとしては、本気で意欲的になっている」(メジャー担当デスク)
選手としてはシーズン最多の262安打、10年連続200安打など前人未到のレジェンドを築いたイチローだが、指導者としての前途は未知数だ。
「イチローに期待されるのは、チームの底上げと観客動員のアップです。マリナーズは16年に業績不振の任天堂から地元の企業グループが運営を引き継いだが、近年は成績低迷のため、人気がジリ貧になっている。とはいえ、大物選手を獲得する資金力も乏しく、展望は暗い。そこで、レーザービームでセーフコフィールドを沸かせたイチローがフロントとして手腕を発揮し、弓子夫人の管理する資産で球団運営にも乗り出せば、早い段階で監督就任の可能性は高くなる」(現地ジャーナリスト)
夫婦二人三脚で、新たな野望へと踏み出したイチローの英断に期待したい。