当時の球団親会社は日本企業の任天堂。社長である山内溥氏(13年没)の寵愛をバックに、誰も意見が言えない存在だったイチローを疎み、排除しようとする動きが顕在化した。
「リーダー格の選手だったエイドリアン・ベルトレ(39)は、チーム成績が芳しくない中、ヒットを量産して記録を伸ばすことにしか目がいかないイチローにうんざりして、地元紙などに匿名で『イチローを殴ってやりたい』と答えていたほど。ベルトレやヘルナンデスのような中南米の選手の多くには、短い現役で稼げるだけ稼ぎ、引退後は悠々自適という考え方が根づいています。彼らにとってイチローは、十分に稼いでいるのに記録のために晩節を汚そうとしていると見え、理解できないわけです」(在米スポーツライター)
死球後、ヘルナンデスはイチローに「My bad!(俺が悪かった)」と大声で謝り、イチローも笑って許したと報道されたが、
「ヘルナンデスはチームのエースで影響力が強い。若い外野手を中心に同僚からのリスペクトも厚いイチローですが、過去の因縁が蒸し返されれば、ヘルナンデスを旗頭に追放劇が再現されるかも。当時はヤンキースに引き取られましたが、今やロートルのイチローを獲得するメジャー球団は皆無ですから‥‥」(在米スポーツライター)
まさに四面楚歌の状況に追いやられたイチロー。友成氏がイチローの進退に言及する。
「本人の現役続行の意思が固い以上、今回の日本凱旋を花道に引退とはならないでしょう。アメリカはチャレンジに寛容な国ですから。そうなると昨年同様にいったん特殊な契約を結び、トレーニングを続けると思います。実はMLBで一時代を築いた大選手でも引退試合をして華々しく選手生活を終えるのは半数ほど。現役続行を希望しながら中途半端な条件での契約を結び、シーズン途中でひっそり引退する例は多い。ここまでくれば、イチローもそうやって自然消滅的にフェードアウトするような気がします」
「塩漬け」が再現されるくらいなら、ファンとしては日本球界復帰を望みたいが‥‥。
「実は、一部ではそういう話も浮上しています。昨季と同じでは試合勘が戻りようもなく、メジャー契約を勝ち取ることが不可能なことはイチローもわかっている。サプライズ好きの性格ですから、ロースターに漏れた直後の電撃発表の可能性はゼロじゃない。マリナーズが手を挙げたため流れましたが、去年も複数のNPB球団が接触していたという情報もありますからね」(球界関係者)
いずれにせよ、不世出のバッターに残された選択の時間はわずかしかない。
※本記事は週刊アサヒ芸能3月28日号(3月19日発売)に掲載