風薫る5月。東京競馬場では毎週、熱いGI戦が繰り広げられているが、今週のそれは、オークス。他馬を寄せつけぬ圧倒的強さで桜花賞を制したアーモンドアイの2冠なるか。これがファンの関心事だろう。
とにもかくにもアーモンドアイは強かった。直線を向いた時、粘り込みを図る1番人気のラッキーライラックを最後方に近い位置から強烈な末脚で捕らえ、さらにゴールでは1馬身4分の3もの差をつけて完勝したのだから、ケチのつけようがない。
そればかりか、まるでモノが違う勝ちっぷりだったため、レース後、ダービー挑戦の話が持ち上がったほど。そうしたこともあり、オークスではアーモンドアイに他馬がどう立ち向かうか、というよりも、アーモンドアイがどのような競馬を見せて勝つのか、ということにファンの注目が集まっているような感じだ。
勝ちっぷりの鮮やかさもそうだが、均斉の取れた、ホレボレするばかりの好馬体。そして血統(GI勝ちの母をはじめ、近親、一族にGI勝ち馬が多数いる良血)。さらには、その走りっぷりやレースセンスのよさなどなど、どれを取っても文句のつけようがないほどの馬。であれば、オークスは馬券的に2着探しの一戦ということにならないか。常識的には、まさにそうだろう。
ただ、その血統だが、父ロードカナロアは、マイルのGI(安田記念)を勝ってはいるが、本質的にスプリンターで、母の父がサンデーサイレンス。祖母の父は名種牡馬ヌレイエフ(英2000ギニー1着失格)と、2400メートルの距離は決してベストとは言いがたいのだ。
このへんに他馬のつけいる隙があるのかもしれないが、手綱を取る名手・ルメール騎手は「こんな扱いやすい馬はいない。どんな競馬も可能で、距離が延びての不安はない」と絶賛。全幅の信頼を寄せている。
ならば、やはり“2着探し”となるのか‥‥。
過去のオークスを振り返ると、03年に馬単が導入されてからこれまでの15年間、その馬単で万馬券になったのは5回(馬連も5回)。この間、1番人気馬は5勝(2着3回)、2番人気馬は2勝(2着4回)で、1、2番人気馬で決まったのが4回。手堅く収まるか、大荒れか、極端な傾向にあるようだ。
穴党の当方としても“2着探し”が妥当かという思いに駆られるが、“どうしても”というご同輩も少なくないことを思うと、やはり血統からくる「距離の壁」があるという前提に立って考えてみたい。
大本命のアーモンドアイがそんなウイークポイントをさらした際、足をすくう馬は、いずれか。
穴党として一縷の望みを抱いて狙ってみたいのが、レッドサクヤだ。
この馬も5戦全てがマイル戦で、12ハロン戦は決してベストではない。しかし、アーモンドアイと同様、折り合い面にまったく不安はない。桜花賞は7着に敗れたが、勝ち馬との差は4馬身もなく、新たな舞台でその差を縮めていい。
それに桜花賞は、一息入ったあとで、決して本来の姿ではなかった。
「ここを目標に、とにかく順調。東京で差のない競馬をしており、輸送に不安はない。力をつけており、楽しみのほうが大きい」
厩舎関係者がこう口をそろえるところだ。
1週前の追い切りは軽快かつリズミカル。状態は桜花賞以上と見て間違いあるまい。ならば、断じて軽く見るべきではない。
こちらも見栄えのする好馬体で、アーモンドアイに負けない血統的な背景がある。ブレイム(BCクラシックなどGI3勝)、ヌレイエフ、名種牡馬サドラーズウェルズが近親、一族にいる良血。逆転があるならコイツだ。