今年で38回目を迎えるジャパンカップ。第1回目から取材している記者にとっては、国際競走としての重みがすっかり消え去ってしまった感がして、年々、興味が削がれてきている。
これは外国招待馬の質の低下に起因していることが大きいと思われるが、欧州の最高峰・凱旋門賞のあとにブリーダーズC(ターフ)があり、12月には香港で国際競走が大々的に行われては、その狭間にあるJCが色あせてくるのは、半ばやむをえないことなのかもしれない。顎足付きの招待で、1着賞金3億円であっても、前述した国際レースの格の違いから、わざわざ極東の地への遠征は、はばかられることだろう。
JCで外国馬が連に絡んだのは、05年に勝利したアルカセット以降、12年間もとだえている。外国の一流どころがJCを軽んじていることは明らかだろう。
そもそもは、日本馬の質が大きく向上したことに起因している。迎え撃つ日本馬には地の利があるうえに強さも上とあっては、リスクが大きい遠征をためらうのは当然だ。
であれば、JCを根本的に見直すべき時期にきているのではなかろうか。招待競走にせず、1着賞金を5億円以上にアップさせて、「格」を見せつけるべきなのだ。毎年、日本馬が凱旋門賞に挑戦しているが、JCも欧米馬が標榜し、憧れるGI戦にすべく努力して、グレードアップする必要があるはずだ。
案の定と言うべきか、今年も外国馬の登録は2頭。善戦はあっても、つけいる隙はなさそうである。
では、顔ぶれを見てみよう。3歳馬は2頭のみ。アーモンドアイとハッピーグリンだ。後者は地方競馬所属。目下のところ状態を見極めてとのことで、出否は五分五分。つまり、実質1頭。ファンなら周知のことと思うがアーモンドアイの強さは傑出しており、現時点では勝ち目は小さいと判断した3歳牡馬勢は、対決を避けたわけである。
そもそも牡馬クラシック3冠目を制したフィエールマンをはじめとする菊花賞組は、間隔が詰まっていることからローテーションが厳しいと判断したのは妥当であり、ダービー馬ワグネリアンは体調を崩して、一息入れている。3歳勢がアーモンドアイのみになるのは当然のことだろう。
古馬は、昨年のダービー馬でJCを2着したレイデオロが有馬記念にホコ先を転じたため、これまた、やや小粒な印象は拭えない。それでも昨年の覇者シュヴァルグラン、スワーヴリチャード、そして復活なったサトノダイヤモンドなど、GI勝ち馬が7頭と役者はそろっている。
しかし、アーモンドアイにはかなうまい。秋華賞の際にも当欄で強調したことだが、半世紀近く競馬に携わってきて、これだけ強い牝馬に巡り合ったのは初めてという思いなのだ。
実績から「超」の字を付けていい女傑だが、その怪物とも言える女王が、秋華賞より2キロ軽い53キロで出走してくるのだ。牡馬一線級と初めての顔合わせで楽な競馬は望めないが、これまでの競馬ぶりを思えば、この斤量がどれだけの味方になるかは、容易に想像がつくというものだ。
問題は体調である。秋華賞は休養明けとはいえ、14キロ増の体重。少々、調整に狂いが生じたからで、少し太かった。普通の馬なら“2走ボケ”が懸念されるところだが、全てが桁外れの馬。むしろ「使われて一段と良化している」(国枝調教師)のだから、これは素直に力を信じるべきだ。つまり、馬券的には今年のJCは、2着探しのレースと見るべきなのである。
当方が穴中の穴と見ているのはガンコだ。休み明けを使われて3戦目となる今回は、必ず走るとニラんでいる。もし道悪になれば、アーモンドアイが多少苦しみそうなだけに、よりおもしろいはずだ。