コロナ禍の中、粛々と競馬は続けられていく。春のGI戦線の真っただ中、今週は牝馬による芝のマイル戦、ヴィクトリアマイルがメインとして行われる。
主役は当然のこと、アーモンドアイである。
当欄で何度か書いてきたことだが、競馬記者になって四十数年、いや、競馬に興味を抱いて半世紀になるが、実際に見てきた牝馬の中で最強とみている。
そんな女傑中の女傑が昨年の有馬記念で、よもやの敗北を喫してしまった。それも9着の大敗。国枝調教師をはじめ、陣営の落胆ぶりは見るに堪えないものであったが、さて、敗因はどこにあったのだろうか。
当方としては、やはり体調に問題があっての凡走だったと推察している。決してベストとは言えない距離(2500メートル)での競馬。冬場でもあり、天皇賞・秋(1着)からプラス6キロの馬体重(486キロ)での出走は、やや重め残りの状態だったのでは、と思えてならないのだ。
そもそも有馬記念の前、熱発により、大事を取って香港挑戦を諦めざるをえなかったことも、少なからず尾を引いていたことだろう。レース当日は、それまで見せた精かんさがアーモンドアイには感じられなかった‥‥。
そしてこの3月、捲土重来を期してドバイに遠征したものの、今度は直前になってコロナ禍の影響でレースを使えず帰国。だから今回が有馬記念以来、今年初めての競馬となる。
ここは血統的にも適しているマイル戦。巻き返しを期待しないわけにはいかないが、今回も頓挫したあとだけに、再び並外れたポテンシャルを存分に発揮できるか否かは、どれだけ本来の姿に戻っているかがカギとなる。
いずれにしても、つくづく思うのは、競馬自体が生き物で「絶対はない」ということだ。
本来ならアーモンドアイからの「2着探し」が馬券の本筋ではあるが、穴党としては本命を打つわけにはいかない。
まずはデータをひもといてみよう。今年で15回目を迎える歴史の浅いGI戦だが、これまでの14年間、馬単で万馬券が飛び出たのは半分の7回(馬連3回)。1番人気馬は3勝(2着4回)、2番人気馬は2勝(2着0回)。1、2番人気によるワンツー決着は1回のみだ。力どおり決まりそうなレースに思えるが、意外と波乱含みであることがわかる。
また、年齢的には、これからピークを迎えようとする生きのいい4歳馬が8勝(2着11回)と圧倒的に強い。ならば穴党としても、このデータに乗ろう。
狙ってみたいのは、シャドウディーヴァだ。
期待された前走の阪神牝馬Sは12着(5番人気)と凡走。注目していただけにショックだったが、思えばパドックから落ち着きがなく、本来の姿になかった。それでも大きく負けたわけではなく、体調さえよければ巻き返しは必至だ。
この中間は減っていた体重も戻って馬体がふっくら。稽古の内容もよく、斎藤誠調教師が「いい雰囲気。今年に入って最もいい状態で臨めそう」と言うほどだ。
人気の一角プリモシーンとは前々走の東京新聞杯で接戦(コンマ1秒差の2着)を演じており、東京のマイル戦はベスト条件。母系は欧州の一流血脈でもあり、一発があっていい。
馬券は、アーモンドアイの体調に問題がないと確認できたなら「馬連1点勝負!」とも思っている。