女傑アーモンドアイが出走してくる。今年の安田記念最大の焦点だ。
ドバイに遠征、堂々とGIドバイターフを勝ってみせたが、これまで同様、レース直後の疲労がはなはだしく、陣営は凱旋門賞を含む海外遠征を主とした今後のプランを白紙に戻した。そして当面は、国内の競馬に専念することを表明。帰国後の第一戦をマイルの安田記念に置いたわけだ。
マイル戦は昨年の桜花賞以来になるが、周知のようにその桜花賞は、最後方に近い位置から強烈な末脚を発揮、難なくモノにしている。そしてこのマイル戦は、初勝利を含めて3戦3勝。牡馬一線級相手のここも、まずは、ほぼ手中にしてしまうものとみられている。
実際、この中間も順調そのもの。1週前の追い切りでは、主戦のルメール騎手が手綱を取り、すばらしい動きを披露していた。まずはここに向け、抜かりのない仕上がり状態にあると見てよさそうだ。
であるなら、アーモンドアイを外した馬券は、考えられないか。私も45年近く競馬に携わってきて、これほど強い牝馬を目の当たりにしたことはなく、「歴代最強牝馬」の称号を与えてもいいと思っているくらいだ。
であれば頭から‥‥と言いたいところだが、当欄の趣旨からすれば、それはそぐわない。やはり、穴馬を挙げなければいけないだろう。
競馬には絶対はない──生き物が競うレースなのだから当然で、しかも今回は、マイル戦に実績があるダノンプレミアムを筆頭とした一線級の牡馬が相手。女傑にとっても勝つことは容易ではあるまい。
データもそれを示している。一見、堅そうに思えるGI戦だが、03年に馬単が導入されて以降、これまでの16年間、その馬単での万馬券は半数を超える10回(馬連では7回)も出ている。この間、1番人気馬は4勝(2着1回)、2番人気馬は3勝(2着1回)。1、2番人気馬でのワンツー決着はわずか1回のみ。意外や荒れる傾向にあるGI戦である。
そうとわかれば冒険も悪くはない。穴党として最も期待を寄せてみたいのは、サングレーザーだ。
昨夏、札幌記念でダービー馬マカヒキを破り快勝、続く天皇賞・秋でレイデオロの2着。これで味をしめてか、GI香港カップに挑み、見せ場を作ったものの4着。そして前走・大阪杯は、後方のまま12着と敗れ去ったが、3カ月半ぶりの実戦で体調が整わず、まず参考外にしていいだろう。
立て続けに2000メートルの距離を4回使ったわけだが、やはりこの馬は本質的にマイル戦がベストなのではなかろうか。
昨春のマイラーズCでモズアスコットを一蹴、レコードで快勝したほどの馬。周知のように強烈な末脚が身上で、直線の長い東京でのマイル戦は、この馬にとっては願ったりの舞台と言っていい。今回は見直すべき一戦ととらえるべきだろう。
昨年の安田記念はモズアスコットに巻き返され5着に敗れたが、レース前からやや落ち着きを欠いていたことを思うと“2走目のポカ(2走ボケ)”だったとみることもできる。それでもモズアスコットとの差はコンマ2秒。一昨年のマイルCSは、勝ったペルシアンナイトにコンマ1秒差の3着。マイル戦の適応力は推して知るべしだ。
ゼンノロブロイ(04年、天皇賞・秋-JC-有馬記念とGI3連勝)など、近親、一族に活躍馬がズラリといる良血。良馬場条件にチャンスは十分とみた。
穴馬はもう1頭、ロジクライもおもしろい。東京コースは〈2011〉と相性は抜群。こちらはディープインパクトが一族にいる血筋で、大駆けがあっても不思議はない。