今週のメインは、記念すべき第160回目になる天皇賞・秋である。天皇陛下「即位礼正殿の儀」の5日後に行われる「天皇陛下御即位慶祝競走」にふさわしい顔ぶれになった。GI馬が10頭。それ以外も重賞勝ち馬がほとんどで、競馬ファンとしては目が離せない一戦と言っていい。
ただ、そうはいっても勝ち負けになるのは、アーモンドアイ、サートゥルナーリア、ダノンプレミアム、ワグネリアンら、ごく限られた馬に絞り込むことができるのではないだろうか。これら4頭は実績からみて他を圧倒しているからだ。
中でもアーモンドアイである。牝馬3冠に輝いただけではなく、世界レコードでジャパンCを制し、さらに年が明けての今春、ドバイターフを難なく勝って世界制覇を成し遂げた。
かつて、これだけの牝馬がいただろうか。この世界で飯を食うようになって約半世紀になるが、私が知るかぎり「最も強い牝馬」であると確信できる女傑である。
異論を挟む向きもあるかとは思うが、牡馬に伍しても遜色なく、私が実際に見た日本馬の中において、シンザン以降、5指に入れてもいい強い馬だと思っている。
その馬が出走してきたのだから、穴党としても斜に構えるわけにはいかない。やはり、この女傑を中心視するべきだと判断した。
5カ月ぶりの実戦になるが、骨折や体調を崩して休養していたわけではなく、ハナから秋初戦を盾と決めていたので、体調に寸分の狂いもない。
まずは、前走の安田記念を振り返ってみよう。スタート直後、他馬に前をカットされ、落馬しそうになる大きな不利を被った。普通の馬ならそこで戦意を喪失するなどして“アウト”だったろうが、かなりのロスを挽回。最後はメンバー中、最速の上がり脚で、勝ち馬にコンマ差なしの4分の1馬身まで詰め寄ってみせたのだ。まともだったら勝っていたことは間違いなく、モノが違うからこそできた芸当だった。
その後は夏休み。リフレッシュされたあとは、ノーザンファーム天栄でしっかりと乗り込まれてきた。その牧場でほぼ出来上がっていたが、1カ月前に美浦トレセンに帰厩したあとも乗り込み量は豊富で、1週間前の追い切りも文句なしだった。
「体がひと回り大きくなって、落ち着きも出た。さらにたくましくなっており、心身ともに成長がうかがえるね」
国枝調教師は、こう言って目を細めるが、私には体全体が伸びやかに見え、動きもダイナミック。「サラブレッドの理想的な姿はこれ!」と思えるほどである。ならば十中八九、勝てるのではないか。
前走のように思わぬ不利を被るかもしれないし、府中の芝2000メートルは、多頭数になるほど外枠を引いた馬は競馬をしづらく、その外枠に入ってしまうことだってある。しかし、それでもこの馬の能力の高さをもってすれば、あっさりとはねのけてくれるはずだ。
充実の4歳(4、5歳馬が圧倒的に連対を果たしている)、そして東京コースは〈3 0 1 0〉と最も得意としており、ベスト距離での競馬。多少の道悪なら問題などあろうはずもなく、頭は、この馬とみていいのではないか。
相手も前記した有力候補に絞られるが、その中で配当的妙味があるのはダノンプレミアムだろう。前走の安田記念は、アーモンドアイと同じく大きな不利を被って、ハナから戦意喪失したもので参考外にしていい。今回はそれ以来の競馬になるが、仕上がりは上々。あらためて注目したい。