南北会談が成功裏に終わり、米朝首脳会談も6月12日開催が決定した。体制の存続と経済支援を条件に非核化を提言する金正恩委員長に対し、強硬姿勢から一転して融和ムードを演出するトランプ大統領。しかしその水面下では、一触即発も辞さない駆け引きが繰り広げられているのだ。
金正恩は経済制裁による打撃に音を上げ、先月行われた韓国との南北会談に続き、6月12日に予定されている米朝首脳会談に乗っかりました。おぜん立てをしたのは韓国・文在寅政権内の従北朝鮮勢力です。
金正恩は当初、韓国の文政権を利用して米国をうまくダマそうと考えました。過去そうだったように、交渉には応じながら時間を稼ぎ、対価を引き出す。その間に機会を見て逆転攻勢に出るというシナリオです。
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こう語るのは、長年にわたり北朝鮮の政治経済を分析、研究し続けてきたコリア国際研究所所長の朴斗鎮氏。3月に上梓した「金正恩」(新潮社)では、知られざる金正恩委員長の狂気に警鐘を鳴らしている。朴氏によれば、今回の米朝首脳会談実現までには、水面下でのシビアな駆け引きが繰り広げられるというのだ。
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しかしトランプは、米朝会談を受諾するやいなや、安全保障担当のマクマスター大統領補佐官を解任し、後任にボルトン元国連大使を指名。さらにCIA長官のポンぺオを新たに国務長官に据えました。北朝鮮との全面戦争は避けるべきだと考えていたマクマスターに比べ、ボルトン、ポンぺオの両者は強硬派と目されています。この人事を見た金正恩は「韓国だけでは心もとない」と察しました。米政権が強硬派で固められた以上、自分たちにも強力なバックが必要です。そこで大親分・中国の力を借りることにしたのです。
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金委員長が今年の3月25日から28日にかけて中国を電撃訪問し習近平国家主席と会談したことは世界に衝撃を与えた。金委員長は今月7、8日にも極秘裏に中国・大連を訪問し習主席と会談。その背景には、米国と並んで権勢を誇る中国に連携を求める思惑があると見られる。
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過去にも金日成や金正日が訪中していますが、3月の会談ほど、中国側が力の差を見せつけたことはありません。中国はわざわざ、金正恩がメモを取る場面などの映像を公開しました。会談でも、習近平は金正恩に対し、尊敬語の「あなた」ではなく、「きみ」に当たる中国語を使っていた。完全に目下扱いです。そこまでされても、中国の力を借りなければ米国に対抗できないのが北朝鮮の立場です。