稀代の天才騎手とのコンビで社会的なブームをもたらし、圧倒的な戦績とそのスター性と話題を携えて大種牡馬となったディープインパクト。だがここにきて、そのカリスマ性に大きな疑問が生じてきた。ついに「時代」の終焉を指摘する声が上がっているのだ。
日本競馬界の至宝ディープインパクトの仔が、春のGIで苦戦中だ。5月5日のNHKマイルカップでようやく勝ち馬を出すまでの間、今年のGIで馬券に絡んだのは、大阪杯のアルアイン3着の1回だけ。過去には3年連続で桜花賞を勝ち、皐月賞もここ3年で2勝していたが、種牡馬デビュー以来初めて、牡牝のクラシック初戦で産駒が一頭も馬券に絡めなかった。
週刊アサヒ芸能は昨夏、「ディープインパクト産駒『最強神話』に陰りあり」と題する記事を掲載して大反響を呼んだが、その傾向がますます強まっているようだ。
その象徴的なレースが、4月28日の青葉賞。ダービーの出走権をかけて7頭のディープ産駒(そのうち3頭は1億円以上の高額馬)が出走したが、一頭も権利を取れずじまい。スーパーフェザーの3着が最高成績で、他は掲示板にも載っていない。1週間後の京都新聞杯、プリンシパルSにもダービー出走権をかけて6頭が出走したが、ここでも結果は同様。この惨状を目の当たりにした競馬ファンからは「数打っても当たらないとは、深刻な事態。これで種付け料4000万円なんて、アキレる」という辛辣な声も出るほどだ。
ディープインパクトを繋養している社台スタリオンが種付け料を1000万円アップして4000万円にしたのは、現3歳馬が新馬を勝ちまくったことによる。昨年の2歳戦で勝利数57というJRA記録を打ち立てたのだ。スポーツ紙競馬担当記者によれば、
「JRAが12年に『ダービーからダービーへ』との声明文を出し、ダービーがサラブレッドのゴールだとの印象が強まった。そこで社台もディープ産駒を早めに仕上げ、新馬戦に臨むようになりました。社台の育成力をもってすれば、そんなことは楽々可能。もとより、ディープにはトップクラスの牝馬をつけているわけだから、そりゃ勝ちます。新馬戦はディープ産駒向けの、スローの上がり勝負になりますし。ただ、問題は勝ち上がった馬のその後。残念ながらかつてのように他を圧倒することができず、桜花賞、皐月賞と続けて新種牡馬の仔に決定的な差をつけられてしまった。種牡馬としてのポテンシャルが低下してきたように思えてきます」
産駒はピークを迎えるのも早く、早枯れ傾向が年々強まっている。それはディーマジェスティ、マカヒキ、サトノダイヤモンドを見れば明らかだろう。
この3頭によるダービー後、「史上最強世代」ともてはやした関係者やファンは今、どんな気持ちなのか‥‥。