いったい、何がこうした異変(スランプ状態)をもたらしたのか。ある競馬関係者は語る。
「どの種牡馬にも不作、豊作の年がありますが、14年産のディープ産駒はまさに不作で、期待ハズレの馬が多かった。例えば牝馬のエリティエールはルージュバックの半妹ということで、デビュー前の評判たるやすごいものだった。しかし、体質が弱くてどうしようもない。2月25日の新馬戦(中山)で9着と人気を裏切って以降、一度も使えない状況です。牡馬のほうでは、パーシーズベストの全弟のステッドファスト。ある競馬コラムで『これで走らなければ今後馬体を見ても意味がないと言い切っていい』と絶賛されていましたが、17、13、15、8着と惨敗続き。見るからにスピードに欠けているし、未勝利脱出は、まず難しいでしょう」
ちなみに、この2頭は天下のノーザンファームが自信を持って某クラブに送り出した良血馬だ。募集価格もそれにふさわしく、6000万円、8000万円と高額だった。
先の競馬関係者が続ける。
「ディープ産駒はムダ肉がつかない馬が多いので、デビューにさほど手はかかりません。しかも、素質に応じてそれなりに走って、ソコソコ結果を出してくれます。しかし、素質だけで活躍していても成長が伴っていなければ、いずれ成績は頭打ちになります。ディープ産駒の活躍馬にはそういう早熟タイプがけっこう見られますね。あのマカヒキも、それに当てはまりそう。馬体面での成長も見られませんし‥‥。ただ、成長うんぬんに関しては、母系との関係もありますから、そういうところもしっかりと見て判断すべきでしょう」
母系のことについて言えば、今の日本はサンデー系牝馬が飽和状態で、ディープにどの馬をつけるのか苦労している。
例えば多くの繁殖牝馬を抱えている社台は、できるだけ良質の牝馬をつけるようにして成功してきたが、日本馬だけではそれも限界と判断。このままでは血統的な発展も望めないと見て、9年ほど前から世界中の名牝を購入している。高額で売りに出されている馬の多くは、その牝馬の仔だ。
そして、ルージュバックの母ジンジャーパンチ(07年の米国最優秀古牝馬)のように、マンハッタンカフェとはうまくいったものの、ディープではダメだったという例もある。
売りに出したほう、購買したほうともに「ディープなら姉以上の活躍も‥‥」と思っていただろうが、期待どおりにはいかなかった。名牝の仔だからといって、必ず走るわけではないのだ。馬券を買う側も、このことを肝に銘じたい。