するとどうなるか。当然、悪徳業者らによる食品偽装が急増する可能性も出てきたのである。
「偽装で最も多いのは中国隠し。でもこの制度になったら“合法的に”中国を隠せることになる」
先頃「週刊文春」誌上で「中国食材が危ない」というキャンペーンが張られたが、中村氏は「こういう報道こそが、中国隠しのうまみを増長させる」と警告を鳴らすのだ。
「あの記事には過去4年間で中国食品の回収事案が10件もある、と書かれていますが、日本における食品回収を日々集計している食品産業センターのデータによれば、日本で回収された全食品の件数は、この4月だけで66件。単純計算して、1年間800件弱。4年間にしたら3200件ほどになる。つまり、中国食品の回収は3200分の10でしかないということです」
回収理由で、最もリスクがあるのがアレルギーで、続いて残留農薬や腐敗、カビ、異物混入、放射能などだが、
「それ以外は消費期限を間違えた、中身と表示が異なっていたという表示ミス。だからといって、この数字を見て、ことさら中国の食品が危ないというのは無理があると言わざるをえない」
厚生労働省の「輸入食品監視統計」(16年)によれば、輸入件数が多い上位5カ国の食品違反率は中国0.25%、アメリカ0.49%、フランス0.24%、タイ0.42%、韓国0.26%。中国はフランス、韓国とほぼ同じ率で、特に高いとは言えない。アメリカのほうがよほどいいかげんで、中国からの輸入食品は厳しい監視が行われていることがうかがえる。つまり、メディアが中国の食材が危ないとあおればあおるほど、悪徳業者は安価な中国食品を輸入し、偽装に手を染める下地ができやすくなるというわけだ。
「確かに中国国内で流通している中には、安全でないものがあるのは事実。残留農薬にしても、中国の食品には想定外のことが起きるケースもあり、センセーショナルに報道されます。でも日本に輸出しているものに関しては輸入業者が駐在員を置いたり、中国の従業員が日本に来て教育を受けたあと、現地スタッフの指導にあたるなど、徹底した管理も行われています。しかも輸入の際には水際でチェックされている。中国に行って食べたら危険なものはあるかもしれませんが、日本に入ってきている食品については、あまり心配ないと言っていい。不安をあおる根拠のない報道に惑わされないことです」