実はこのニオイには秘密がある、と河岸氏が解説する。
「私たちがふだん食べているのは、生まれてから180日前後の豚の肉です。この豚の『母親の豚』『父親の豚』のことを業界では『大貫豚』と呼び、これが挽き肉用として使われています。この肉は硬くて獣臭く、普通に食べるとおいしくない」
それもそのはず、通常は小売店には出回らない、いや、出せないレベルのものだからだ。
「ただ、肉の色が濃いため、きれいに見えるという理由から、使われることが少なくありません。外注の工場でパック詰めした挽き肉で値段が相場より安い場合は、その可能性が高いと見ていいでしょう」(河岸氏)
案の定、色ツヤがいい「疑惑の挽き肉」を選んでカゴに入れ、ハムに手を伸ばす記者。そういえば食品添加物には発ガン性があるものも‥‥と念のため裏面の表示を見ると「原材料名」として、豚ロース肉、還元水あめ、大豆たん白、食塩、卵たん白などと書いてある。なぜハムに大豆や卵のタンパクなどが入っているのか。
「ロースハムというのは本来、豚のロースだけを使用したハムのこと。だから原材料として豚ロース肉だけを使っていなければ、ロースハムとは名乗れない。ところがハムメーカーの多くがさまざまな混ぜ物を加えて内容量を2~3倍にかさ増ししていて、極端な話、100グラムの豚肉から150グラムのマズいロースハムができているんです」
小若氏が追撃する。
「豚肉に塩とコショウなどの香辛料をすり込むのが古典的なハム製法。手間暇かけて加工するから、ハムの値段は高かった。ところが、インジェクションという手法によって、日本は増量ハムを作り、格安で販売するようになりました。さまざまな混ぜ物を使って最大2.2倍まで増量しているというから驚きです」
インジェクションとは肉に剣山のような100本以上の注射針(インジェクター)を刺して、牛脂を人工注入するもの。
問題はかさ増しだけにとどまらない。混ぜ物には大きな危険が潜んでいるのだ。
「その代表格が、大豆や卵白、乳などの異種タンパクや脂肪、油といった原材料。ところが大豆、卵白、乳‥‥これは全てアレルゲンなので、アレルギーを持っている人が口にした場合、命に関わる危険性がある。それが最大の問題です」(河岸氏)
さらにロースハムには、肉と肉の結着性を高めて食感をよくするために、添加物である「リン酸塩」を使用するが、これについて食品評論家の小薮浩二郎氏は、次のように警鐘を鳴らす。
「リン酸塩を過剰摂取すると、子供から大人まで骨がもろくなります。特に高齢者の場合、骨粗鬆症の原因になるため、注意が必要です。リン酸塩の過剰摂取はマグネシウムの吸収も抑制するため、神経過敏や集中力低下を招きます。さらに恐ろしいのは、心筋梗塞を引き起こし、死を招くケースもあることです」
リン酸塩はそもそも多くの食品に含まれているため、添加物でさらに摂取すると過剰摂取となる。