「殿、今週の金曜にオールナイトライブを開催するのですが、よろしかったら、ビデオコメントを頂いてもいいですか?」
5月25日に開催された、わたくしの独演会「オールナイトライブ・おしゃべりウッドストック」の1週間程前、弟子の特権を利用して、先に挙げた“いきなりのずうずうしいお願い”をすると、「おう。今週やんのか?」と、まずは日程を確認した殿は2分程“どんなコメントにするかな?”といった具合に黙って思案すると、
「あれだな。コメントよりよ、文章にしたお祝いスピーチのほうがいいだろ」
と、さらりと言い放ち、そして“お前、メモっとけな”といった顔つきになると、出し抜けに、文面を口頭で語りだしたのです。
「このたびは弟子のライブに参加いただき、まこにありがとうございます。きっと、会場の皆様は今頃、北郷の口車に乗せられ、朝までの地獄のライブに来てしまったことを後悔しているはずです。こんなことなら、漫画喫茶で寝てるほうがよかった。朝までバイトでもして、お金を稼いだほうがよかった。等々、泣いてる方が大半ではないでしょうか。とりあえず、朝まで長いですから、途中途中、ゲロ吐くなり、ウンコ漏らすなりして、何とかやり過ごしてください。あとは適当にナンパして、トイレで異性とS○Xするなり、同性とS○Xするなり、好きにしてください。平成30年5月某日。世界的映画監督であり、ベストセラー作家でもある、人気と実力を兼ね備えた、高額納税者タレント、北野“独立”武より」
と、スラスラと言い終えると、“どうだ、こんなもんでいいだろ”といった笑顔を見せたのです。
弟子のわたくしが言うのもなんですが、殿はこの手の「スピーチネタ」が、恐ろしく得意です。
皆様の記憶にあるところでは、2014年の春、「笑っていいとも」最終回にて、「表彰状」といった形で、タモリさんへ向けて読み上げた、大変ブラックなスピーチが、印象にあるのではないかと。この時の殿は、「いいとも」の過去の放送上のミス、並びに、捕まったかつてのいいとも青年隊のことなどをほじくり返しては、悲鳴にも似た爆笑をかっさらっていました。ちなみに、生放送後すぐ、
「おう、『いいとも』見てたか? あの表彰状、結構面白かったろ?」
と、表彰状作成に深く深く関与し、内容をあらかじめ知っていたわたくしに対して、“本番でのウケ”に興奮してしまい、“そんなことなどすっかり忘れてしまった殿”から、直電が入ったのも、今となっては懐かしい思い出です。
さらにちなみに、6年程前、殿から初めて「面白スピーチ」作成を頼まれた際、何度もダメ出しを受け“かしこまった言葉遣いで、面白い文章を作る難しさ”を知った経験は今、わたくしの大きな財産となっています。殿は何でも、“まずはやらせる”方なのです。とにかく、わざわざのお祝いスピーチ、あざっす!
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!