いきなりジャイアントキリングを成し遂げ、列島は熱狂した。それでも日本サッカー界の重鎮は冷静に分析。決勝トーナメント進出を目指すからこそ、釜本邦茂氏(74)は辛口提言するのだ。
日本のW杯初戦は世界もビックリの展開だった。開始3分でコロンビアの選手がハンドして、一発レッドで退場になるとはね。運が味方してくれたけど、「勝ち点3」を取れたのは大きいですよ。
国際親善試合で低迷していたこれまでの試合と比べて、内容もよかったよね。だけど、10人のコロンビア相手にあの試合内容だったというのを、みんなわかっているのかな。サポーターは浮かれてもいいけど、勝って兜の緒を締めよってことで、選手やマスコミは気持ちを引き締めなきゃダメだよ。
「数的優位」に立ったから中盤でボールは回せていたけど、パススピードが遅いものだから、攻撃は停滞してしまって、なかなか揺さぶれなかった。相手が11人だったら、やっぱり難しい試合になっていたと思う。
得点シーンもペナルティキックとコーナーキックだけでしょ。パスをつないだ流れの中で、乾が切り込んでいったり、酒井(宏)にシュートチャンスがあってもゴールを決めることはできなかった。
数的優位のメリットがあるのに、3点目、4点目が取れなかった「決定力不足」は、明白な課題だね。もし勝ち点で並んで、グループリーグの突破が得失点差での勝負になったら、自分たちの首を絞めることになるかもしれない。
大会前から注目されたトップ下は香川が先発で出場したけど、本田がベンチでも驚かなかった。そもそも本田をトップ下で起用するのはお勧めしません。攻守で運動量が求められるポジションなのに、「走れない」本田に期待するのは厳しいだけ。運動量が絶対的に少ないから、ボールを持ってもすぐに囲まれて潰されてしまうことが多いんだよね。
起用するなら、これまで勝負強さは見せてきたし、シュート力もあるのでセンターフォワードかな。だけど、コロンビア戦で大迫があれだけ体を張って活躍したら、これからも先発は難しいよね。全盛期のパフォーマンスだったらレベルの高い選手だけど、今の本田の運動量ではW杯の試合ではなかなか通用しません。
第3戦目の強国ポーランドとの試合も厳しくなるだろうね。コロンビア戦みたいに数的優位のラッキーはそう簡単に起きないだろうし。世界でも有名なエース・FWレヴァンドフスキは、一瞬でも油断したら点を取ってくるので、DF陣は気を抜くことが許されない。
決勝トーナメント進出のキーマンですか? 大迫も原口も乾も、前線の選手全員に期待してますよ。とにかく勝敗を決めるポイントは日本の決定力。当たり前ですが、シュートはゴールの枠に飛ばせば決定打になるんですよ。日本は何十年たってもこの課題が解消されていない。ゴール前で焦りすぎなんです。
大事なことだから何度も言いますけど、「落ち着いてボールをゴールの枠に飛ばす」。それだけですよ。決勝トーナメントに進めるかどうかはね。
※本インタビューはセネガル戦(6月25日)の前に実施