ロシアW杯開幕前のボロクソ批判を覆し、日本代表がコロンビアに「半端ない」番狂わせを演じた。歴史的勝利に列島が歓喜に沸くウラ側では、なんとトップ下争いに負けた元エースが全面降伏して態度が一変。チームが一丸となり、決勝トーナメント進出を決めた。
「うぉぉぉぉーーーーー」
値千金のヘディングで勝ち越しゴールを決めた瞬間、FW大迫勇也(28)が雄叫びを上げながら日本ベンチに向かって走りだす。それから22分間、南米の強豪コロンビアの猛攻に耐え続ける姿があった──。
勢いそのままに、第2戦のセネガル戦も善戦し引き分けに持ち込んだが、初戦で勝利したチームは、現行方式となった98年フランス大会以降、85%が1次リーグを突破しており、最終戦のポーランドに敗れたものの、日本もギリギリのところで決勝トーナメントへの進出を決めた。
6大会連続6度目の出場となった日本の初戦は、開始早々に神風が吹いた。コロンビアの選手がMF香川真司(29)のシュートをハンドで防ぎ、一発退場。ペナルティキックを香川が冷静に決めたものの、前半終了間際にフリーキックから同点にされてしまう。サッカージャーナリストの六川亨氏はこう解説する。
「先制点を取ったあと、数的優位の状況を生かして、無理をせずにボールを回していました。キーパーまでバックパスしてもっと相手をジラしてもよかったのですが、しだいに前線にボールを放り込む場面が増えてきたんです。スタジアムはコロンビアサポーターが9割のアウェーで、ボールを回している最中に一斉にブーイングされると、強豪国ではない選手の心理としては攻めなきゃと思ってしまう。コロンビアが日本の立場だったら、どれだけブーイングを浴びてもどこ吹く風。試合運びの面で日本の若さを感じました」
ハーフタイムには西野朗監督(63)が「数的優位ではなく、ポジショニングで優位に立て」と喝を入れると、早いボール回しからシュートチャンスが増えていく。そして後半28分、冒頭で触れたように大迫がゴールネットを揺らして劇的勝利を飾った。苦杯を舐めたコロンビア代表を取材したスポーツライターの小宮良之氏はこう話す。
「コロンビアの選手は共通して『試合序盤での退場が大きかった』と感想を漏らしていました。『一度は同点に持ち込んで意地は示した』とも言っていたのですが、それに納得しないラジオ局の記者からやつぎばやの質問で攻めたてられ、『慢心があったのか』と、ふがいない結果を問い詰められた時には、『それはありえない‥‥』と力なく否定するのがやっとでした」
日本がW杯で南米勢に勝ったのは史上初。コロンビアにしてみれば、本音では負けるとは微塵も思っていなかったのだろう。