こうした裏社会専門詐欺師が跋扈する背景に、「名簿流出」の可能性をあげるのは、ある独立系組織の組員だ。
「実際に私の知り合いが名前を使われて迷惑していました。やはり厄介なのは、実在する組織の幹部名を使っている点でしょう。ケツモチを持ちかける時に責任者の名前を出して『○○さんがヤキモチ焼いちゃうと困るんで内密にしておいてもらえませんか』と言われたら、内情を知る同業だと思い込んで、つい信用してしまうのも理解できます」
詐欺師が組事務所の電話番号や組員の役職・氏名に通じているのも、名簿があれば腑に落ちる。
「最近は、ヤクザと詐欺グループの関係が密になり、警察などから追われて、ヤクザ組織に駆け込むヤカラも増えたと聞きます。そういう連中がこっそり名簿を盗みだし、みずからの詐欺の道具にしたり、情報屋に売ることは、十分に考えられます」(上野氏)
名簿には、ヤクザ個人の携帯番号までもが記載されていることも珍しくない。
「携帯にもおかしな電話がかかってくるようで、注意を呼びかけている。『○○会の○○組長の紹介で、野球を張る(野球賭博の)窓口を紹介してほしい』と。そうして何人かの組員を介して実際に賭けるんだが、賭博の精算は“あと”が基本。『のんでもらえますか?』と電話で賭けるだけ賭けて、勝てば配当を受け取り、負ければ逃げる。昔からある詐欺だが、そういう電話がかかってきて、『もし本当に大幹部の紹介だったら』と思うと、ムゲには断れない」(二次団体幹部)
ただでさえシノギに窮しがちな現状を考えれば、ヤクザ社会にとって看過できない大問題なのだが‥‥。
「義理人情に厚いヤクザほどポーンと大金を差し出してしまうもの。組織を抜けた人間が刑務所に入って、親分に手紙をよこすんです。『出所したらまた組に戻りたい』と。でも、それはハッタリで、組に戻ることはない。ウソだとわかっていても親分は何十万円という金をムショに送金する。それがヤクザなんです」(影野氏)
ヤクザと詐欺師の攻防は今後も続きそうだ。