だが、週末に膨大なレースを予想するだけでも、とてつもない労力を要するはずだが、この“馬券リーマン”が、データの解析に用いたのは、意外にも市販の競馬予想ソフトだった。
「といっても、市販のソフトに過去のレースから分析したデータを加え、独自のシステムを自分で作ったわけです。そのデータというのは、簡単に言えば、1着になる確率が高い馬に賭け続けるのではなく、10回に3回くらいしか1着にならないが、勝った時には大きな配当が見込める馬に厚めに賭けるのです。その結果、収支が少しずつプラスになるという仕組みです」(前出・中村氏)
競馬ファンは、“本命党”と“穴党”に大別できるが、例えば勝率が高い三冠馬オルフェーブルを軸にする本命党は、馬券が当たる確率こそ高いものの、その分、オッズが低くなり、払戻金額も少なくなる。
一方、穴党ならば、一発の当たりは大きいが、当たり馬券を買うためには、膨大な組み合わせで馬券を買わなければいけなくなる。そのために、オッズの解析ソフトも市販されているものの、そこまで回収率の高い精巧なソフトはいまだ開発されていないのが実際のところだ。
「何より元手の100万円が1億円以上になったとはにわかに信じられない」
と驚きを隠せないのは、同様に競馬予想ソフトを使って年間1000万以上の実績を上げている競馬予想グループの主催者A氏だ。
「仲間内では、多い人でも1日に投入する額は50万円ぐらい。年間でも5000万円ほど。この男性は3年間で使った金額が28億7000万円ということは、1年で9億5000万円。これを年間100日で割ると、1日当たり、大ざっぱに見ても1000万円弱。スゴすぎです。それに20億円で1億円増える計算だから、回収率で見れば105%程度ですが、それでも十分すぎる額でしょう」
実際、競馬の勝ち馬投票券には運営費などあらかじめ25%が控除されている。つまり、わずか「105%」の回収率でも、控除分の25%を加味すれば130%の回収率となるわけだ。まさに驚異的な数字と言われるゆえんなのである。
前出・A氏は、競馬予想ソフトを駆使した競馬的中術の“仕組み”を明かしてくれた。
「例えば、ある騎手が特定の厩舎の馬に乗ってきたり、未勝利戦で芝→ダートに変更してきた馬の父や母父馬に注目してみたりするわけです。ここまでは、予想する人間のアナログな作業でも可能です。そのうえで、例えば先月なら、京都芝1200メートルに狙いを定めて馬券に絡む可能性の高い馬の条件を過去のデータから探り当て、その条件に見合う馬を機械的に購入していくわけです。この細かいデータを探り当てるのが、ソフトの役目。ですから、ヤマカン派やパドック派のように、このレースだけ、この馬だけにドカーンというような勝負はしません。03年の宝塚記念で、6番人気のヒシミラクルの単勝に1000万円以上も賭けて、2億円近く儲けたオジサンが話題になりましたが、あのパターンは馬券予想ソフトではありえませんね」