100万円の軍資金を元手に馬券を転がし雪だるま式に“的中”させた配当金は、トータルで30億円超! 驚天動地の「105%回収法」に成功した〝わらしべ競馬長者〟を待ち受けていたのは、よもやの脱税起訴だった。不服とする男性は「外れ馬券27億円分を経費に認めて」と裁判に打って出た。古今東西のあらゆる競馬必勝法を超えた「最強の馬券術」、その騒動に迫る─。
ギャンブルやバクチには、完全無欠の必勝法は存在しないと言われている。ところが、そんな“常識”を覆す事件が起きた。社会部記者が語る。
「今年2月、大阪国税局が強制調査の末、39歳の会社員を所得税法違反で在宅起訴しました。その容疑たるや男性が07年から09年の3年間で、競馬で約28億7000万円の馬券を購入し、約30億1000万円の払い戻し金を受けながら、これを税務署に申告していなかったというもの。つまり、1億4000万円ほどの実利益を得ていたんです。しかも会社員の年収は約800万円。にもかかわらず、追徴された税額は実に5億7000万円に上る。手元にそれだけの金額がないだけに、とても支払えないと、裁判が続いています」
裁判の最大の争点は、28億7000万円の馬券の購入額がいわゆる“必要経費”に当たるか否か。検察側は、
「約30億円の払戻金は一時所得に当たる」としつつ、「必要経費は当たり馬券の購入金額分のみ」として馬券の購入総額については認めないと主張。会社員側は「27億円分の外れ馬券を経費として認めてほしい」と訴え、両者の主張は平行線をたどっているのだ。
前代未聞の「外れ馬券」の扱いを巡る裁判で、男性側の代理人である弁護士の中村和洋氏が言う。
「何も男性は違法な賭博をしたわけではありません。誰もができる公営ギャンブルである中央競馬で、しかも最初に口座に振り込んだ100万円を一度もなくすことなく徐々に増やしていったのです。実に健全なやり方だと思います。それが永久に支払うことのできない税額を納めよというのですから、理不尽極まりないことです」
なんと、100万円の元手から、実に3年間で140倍もの金額にまで殖やしていたというのだから、驚くほかない。
まさに“錬金術”とも言える必勝法は、どのような方法だったのか。その驚異の的中法の概要について前出の中村氏が解説する。
「一度に20億を賭けてポーンと30億儲かったとかそういうことではないんです。考え方としては統計学的見地から長期的にたくさんの馬券を買い、その中で一定のリターンが得られるようにした。最初の投資金額の100万が150万、その150万が200万、500万‥‥と徐々に増えていった。それを積み重ねていき、3年間でトータルした実利益が1億4000万円となったわけです」
男性は、競馬場や場外馬券場ではなく、ネット経由で馬券を購入していたという。これはJRAのネット端末IPAT登録者であれば、誰でもできる方法だ。通常ならば、勝ち馬を予想したうえで、単勝、馬連、3連単などの馬券に投票するところだが、この男性は、桁外れの購入法でタネ銭を殖やしていったという。
「仕事のない週末に開催される中央競馬で、例えば3カ所で開催するとします。すると2日で合計72レースありますが、そのうちの新馬戦と障害レースを除いたほぼ全レースで馬券を買っていました。その買い方も、レースによって1レースで何十通りから何百通りまで、単勝から三連単までいろいろな馬券を組み合わせて購入。結果的に、100通り賭けてそのうちの2つくらいが当たると、当たり馬券の配当倍率によって、最終的には全体の投資金額より多く帰ってくるという買い方だったんです」(前出・中村氏)
つまり、レースや買い目をしぼるのではなく、反対に買い目を増やす、まさに1本の釣り竿で大物を狙うのではなく、非常に大仕掛けな投網を投げ打ち、大漁をせしめるという、逆転の発想とも言うべき統計的な手法を駆使した大胆な的中法だというのだ。