「小泉再訪朝」から14年が経過しても、日本人拉致被害者は1人も帰国せず、「成果ゼロ」の状況が続いている。そんな中、自民党総裁選での「安倍3選」が事態打開の契機となる可能性が浮上。拉致問題を知り尽くした元担当大臣が「生存者」と北朝鮮の思惑について、生々しく語った。
世界に存在感と脅威を誇示したい北朝鮮にとって、核を「廃棄」する選択肢はあっても「放棄」はありえません。それに比べたら、拉致問題を解決させるほうがはるかに容易なことなんです。「今まで間違った情報を出していました」と言えばいいだけですから。それなのになぜ、拉致問題は一向に進展しないのか。それは外務省を中心とする日本政府機関が拉致問題を本気で解決しようとしている、と北朝鮮に思われていないというのが一つの原因でしょう。
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こう語るのは、民主党政権時代に拉致問題担当相を務め、現在は拉致議連幹事長の松原仁衆院議員(62)=無所属=だ。緊迫していた北朝鮮情勢は、米国が「圧力」から「対話」路線に舵を切ると、風向きが激変。6月12日に史上初の米朝首脳会談が開かれ、米国のトランプ大統領(72)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(34)が握手を交わした。会談後の会見でトランプ氏は、拉致問題を提起したことを明かし、膠着状態からの進展が期待されている。
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実は、私が拉致問題担当大臣をしていた当時から、日本に対する北朝鮮の印象は、中国などと比較して、むしろとても好感度が高いんです。中国は北朝鮮の資源を二束三文で買い叩いたり、いつも上から目線なので、朝鮮民族は尊重されていないと感じているのです。
そんな中、トランプ氏が米朝首脳会談で「日本が経済支援で金を出す前提条件としては拉致問題の解決しかありえない。日本の金が必要じゃないのか」と金正恩氏を恫喝して、その言葉にグラついた北朝鮮が、拉致被害者を日本に帰国させる可能性が高まってきたと考えられます。
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日本は1965年に韓国との間で「日韓基本条約」を結び、総額8億ドルの経済支援を行った。それを参考に現在のレートなどを含め、
「拉致問題で北朝鮮が協力すれば、1兆円の経済支援をする準備があると北は理解しています」(松原氏)
9月20日には自民党総裁選が予定され、安倍晋三総理(63)の「3選」が決まれば、拉致問題の解決の追い風になるという。
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北朝鮮の経済にとって日本はドル箱というだけではなく、そもそも金正恩政権が拉致問題に手を染めたわけではないので、この際、情報を出しきって、拉致問題を解決して全て終わらせたい、全員戻して楽になれたらいい、と思っている人たちが金正恩氏の周囲にはいるようです。
米朝首脳会談での米国の要求に従って非核化が実現すれば、戦争の脅威はなくなる。北朝鮮は民主化に向かい、外国資本を受け入れるなどして自由化が進みます。そうすれば、拉致被害者の存在は隠しても隠し通せないということもわかっている。
ただ一方で、日本の現政権が政争の具として拉致問題を利用し、さらなるマイナスイメージを植えつけられるのを、北朝鮮は非常に嫌がっています。安倍総理とは交渉したくないと思っている、という情報も聞こえてきますが、総裁3選が決まれば、交渉のテーブルに着かざるをえなくなるでしょう。