一向に解決しない拉致問題に一筋の光明が差し込んだ。ドナルド・トランプ大統領の訪日で、拉致被害者「家族会」メンバーとの面会が実現。拉致問題解決を高らかに国際社会にアピールしたのだ。その一方で、水面下では北朝鮮が日本政府に「拉致被害者の返還」を打診。札束が飛び交う「裏金外交」を繰り広げていたのだ。
「必要なのは対話ではなく、圧力だ」
9月21日の国連総会での演説で、高らかに安倍晋三総理(63)が宣言してから約1カ月半余り。“盟友”である米国のドナルド・トランプ大統領(71)が、11月6日の午後2時過ぎ、東京・元赤坂の迎賓館で、北朝鮮による日本人拉致被害者家族と初めて面会し、国際社会へアピールした光景は、拉致問題解決への一筋の希望と言えるものだった。
外務省関係者が明かす。
「トランプ大統領は、横田めぐみさんの母親・早紀江さん(81)や、拉致被害者の曽我ひとみさん(58)ら参加者と顔を合わせると、メラニア夫人(47)とともに、一人ずつと握手をして回りました。それから面会は非公開で行われ、参加者が持参した被害者の写真をトランプ大統領がみずから手に取って、訴えに耳を傾けながら、時折、険しい表情をのぞかせていたそうです」
くしくも安倍総理が、国際社会が一致団結して北朝鮮への圧力をかけることを主張した直後に、トランプ大統領も、国連の演説で「13歳の日本人の少女を拉致した」と北朝鮮を厳しく批判。これまで日米が共同歩調を取ってきただけに、家族会との対面は、「安倍内閣で解決する」という強いメッセージが結実したものだった。
ところが‥‥。
「拉致問題が急速に前進したのは、小泉政権下の02年のこと。日朝首脳会談が開かれ、北朝鮮側が拉致の事実を認め、拉致被害者5人の帰国が実現した。だが、それから15年の歳月が流れても進展はほとんど見られず、新たに祖国に帰ってきた被害者はいないのが実情。生存者の確認など拉致問題の全容解明には程遠い状況が続いています」(外信部記者)
現実的には、北朝鮮の核ミサイル開発により、日朝交渉は停滞。実は、こうした状況を打破すべく、北朝鮮は日本側に秋波を送っているというのだ。前出・外務省関係者が証言する。
「10月下旬、北朝鮮が東部の町で終戦前後に死亡して埋葬された、軍人など日本人の一部の遺骨を掘り起こし、移送する様子を日本メディアに公開しました。本来は、地元の工場を拡張するために移送したそうですが、北朝鮮側は『人道的な配慮』だとアピールすることで、日本側と対話を再開させたい狙いがあると見られています」
それどころか、水面下でも北朝鮮が日本政府に接触。「裏交渉」を持ちかけてきたというのだから恐れ入る。さる官邸関係者が声を潜めて言う。
「実は今年の3月頃、拉致問題に関して北朝鮮が日本側に『接触』を図ってきました。北朝鮮と日本の対話ルートは、常に開かれていて、連絡を取れる関係にあります。例えば、国連の場で朝鮮総連を通じて、中国やベトナム、ミャンマーなど、北朝鮮との関係が深い国にある大使館を通じて、大使同士がやり取りできるルートが築かれているのです」
ところが、今回の交渉に際しては、北朝鮮は拉致問題を解決するために、相応の「金銭」を要求してきたというのだ。
「拉致被害者を返すので、名目上は貧困支援でも何でもいいからと、経済面のバックアップを望んできました。しかも、『先払いしてくれ』というムチャクチャなものだったのです」(前出・官邸関係者)
経済的に困窮する北朝鮮が、日本から金を引っ張る最大の材料が拉致問題。いわば、その弱みにつけ込んで北朝鮮は「裏金外交」を繰り広げようとしたのだ。