北朝鮮側から我々に伝えられてくる情報は、横田めぐみさんと田口八重子さんを含め、多くの拉致被害者の生存情報です。北朝鮮は縦割りの組織なので、各組織が独自の情報を持っている。それらの複数の組織から、さまざまな側面からの同一の生存情報が出てくることになれば、その信憑性はより高まってきます。
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7月31日には蓮池薫さん、祐木子さん夫妻が新潟県で拉致されてから40年がたち、連名のコメントを発表。多くの被害者の帰国が実現しないことに、
「いったい、いつまでこの状況が続くのか。北朝鮮の言うように『解決済み』であるはずがない」
被害者と家族の高齢化が進む現状にも触れ、
「本当にもう時間がありません」
と、日本政府が全力をあげて交渉に取り組むことを求めている。松原氏は生存情報について、さらに切り込んだ。
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また、当事者や当事者の家族しか知りえない秘密情報も耳にします。それらを踏まえると、横田さんや田口さんなどの拉致被害者が生存している可能性はきわめて高いと判断できます。
もっと言えば、これまで北朝鮮が伝えてきた死亡情報は、全てがインチキだった。04年に北朝鮮側が横田さんの遺骨として渡してきた骨も、DNA鑑定で別人だとわかったのは有名な話です。
北朝鮮は02年に5人を帰国させた時、これで終わるだろうと思ったら「まだ他にもいるだろう」と、むしろ責められてしまった。あの失敗を二度と繰り返したくないと思っていると聞きます。
拉致問題担当大臣の時、
「特に(拉致被害者の中で)金ファミリーのプライバシーを知っている人を帰すのはまずい。日本に拉致被害者を帰した時に、彼らが帰国後に日本の報道関係者と接触しないように、マスコミとの関係を断ち切れますか?」
と北朝鮮のエージェントに直接言われました。「報道の自由」の国でそんなことができるわけがないので、
「(帰国した拉致被害者は)理性を持って行動しているので、ご心配のようなことにはなりません」
と丁寧に説明を続けました。それでも慎重な姿勢を崩しませんでしたが。
今の北朝鮮には、象徴的存在である横田めぐみさんが帰ってこないかぎり、日本国民が拉致問題を解決したと認識しないことは、メディアを通して伝わっているでしょう。早期の帰国を実現させて成果を出すためには、拉致問題はオールジャパンで取り組むべき問題です。今こそ安倍総理は、これまで交渉に携わってきた日朝の関係機関を大胆に外して新ルートを構築し、みずからがその先頭に立って直接交渉するべきです。