朝鮮総連関係者はこの疑義に対し、次のように裏事情を説明した。
「今回は北朝鮮の秘密機関とアメリカの諜報機関の双方が調べた結果なので、信用できるのではないか。アメリカの諜報機関とは、CIA(中央情報局)のこと。報告書を書かせたのはCIAであり、(5月31日に)それを受け取ったポンペオ氏は元CIA長官です」
ただし、こんな不穏な話もあった、と話すのは、先の官邸関係者である。
「そもそも北朝鮮は米朝会談前、『ニセ被害者』を帰す算段をしていたんです。自分から万景峰号に乗り込んで北朝鮮に渡り、半ば工作員的になった、いわば『協力者』を拉致被害者のテイにして、まとめて何人か帰す、というものでした。この情報をアメリカ経由で知った安倍総理は『それはけしからん』となった」
そんな中、拉致問題において、その象徴的存在として扱われる、横田めぐみさんに関する衝撃情報が飛び込んできた。声を潜めて明かすのは、米政府に通じる関係者である。
「アメリカは、めぐみさんが確実に生存しているという確証を得ており、実際に確認も取った。それは横田夫妻にも伝えられている。めぐみさんは北朝鮮の高位役職者となっている」
北朝鮮政府は02年、めぐみさんについて「すでに死亡した」と説明している。北朝鮮政府の内情に詳しいジャーナリストが言う。
「めぐみさんは重度の精神疾患を抱えて隔離病棟に収容され、30歳だった94年4月10日に死亡し、15日に付近の山に土葬されたとされています。一方で、北朝鮮がめぐみさんの遺骨として提出したものは、DNA鑑定で別人と判明した事実がある。めぐみさんの生存に関しては、複数の脱北者の証言がありましたが、物証、状況証拠はなく、証言者の言葉にもブレが見られました。ただし、ウソだとも断定はできない。また、11年に韓国・自由先進党の議員が入手した北朝鮮高官の話では『めぐみさんは生存しており、知ってはいけないことを知りすぎたため、日本に帰すことができない。だから他人の遺骨を渡した』と。この議員は日本政府にそう証言しています」
また、防衛省の命を受け、15年以上にわたり、北朝鮮に出入りしてスパイ活動を行っていた人物がいるが、
「このスパイはスイスで北朝鮮系の関係者から『めぐみさんは確実に生きている。政府の思想・教育関係の部署の比較的高い地位に就いている』との話を聞き、防衛省にも報告済みだと話していました」(ジャーナリスト)
めぐみさん生存説が信じるに足りうるような、こうした複数の証言があるのもまた事実なのだ。