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愛甲猛を擁する横浜が悲願の「夏の甲子園」制覇した「第62回大会」

“平成の怪物”松坂大輔(中日)を擁し、1998年の第80回夏の選手権で全国制覇を達成。同時に史上5校目となる春夏連覇を成し遂げた横浜(神奈川)。70年代、80年代、2000年代で各1回ずつ優勝を果たしており、4つの年代連続で甲子園を制しているのだ。このうち70年代と2000年代は春の選抜だったが、80年代の優勝は、同校にとって初となる夏の選手権制覇であった。80年の第62回大会のことである。

 実はこの2年前の78年第60回大会にも横浜は出場している。この時注目されたのが、1年生エースの愛甲猛(元・中日など)と、同じく1年生ながら1番・セカンドでレギュラー出場を果たした安西健二(元・読売)だった。この時は3回戦で県岐阜商の前に0‐3で敗退したが、愛甲は初戦の徳島商戦で左腕からの鋭いカーブと伸びやかなストレートを駆使し、2失点11奪三振の快投で完投勝利。かたや安西も2試合で8打数3安打1本塁打と活躍。2年後の日本一への種を蒔いていたのだった。

 そして2年後の夏。愛甲は県大会で1点も許さず、再び甲子園に姿を現した。圧倒的な強さで予選を制した自信が言わせたのだろう、「オレたちは優勝するために甲子園にやって来た」と愛甲は堂々の優勝宣言。その言葉通りに横浜は初戦の古豪・高松商(香川)戦から実力全開。この試合、3番打者でもある愛甲は右翼スタンドへ弾丸ライナーの本塁打を放つなど、8‐1と一方的に勝利すると、続く江戸川学園取手(茨城)戦も9‐0と圧勝。

 だが、3回戦の鳴門(徳島)戦では一転、苦戦を強いられてしまう。相手エース・島田茂(元・ロッテ)の前に先の2戦での猛打ぶりが信じられないほど打線が沈黙。だが、対する愛甲も鳴門打線に得点を許さず、結局、0‐0で迎えた9回表に1死から1番・安西がセンターオーバーの三塁打を放ち、悪送球が絡む間に決勝のホームイン。1‐0の辛勝だった。

 準々決勝も苦しい試合となった。相手はこの前年に史上3校目となる春夏連覇を達成し、夏の連覇を狙う強豪・箕島(和歌山)。横浜は安西の4打数4安打の活躍もあり、3回までに3点のリードを奪うも中盤以降は防戦一方に。この箕島の追い上げを愛甲が力投で振り切り、3‐2で1点差勝利。箕島の夏連覇を阻止し、ベスト4進出を決めたのだった。

 準決勝の相手も関西の名門・天理(奈良)だった。試合は雨中の投手戦となり、7回表に愛甲はエラーをきっかけに1点を先制されるも、その裏に2死無走者から3点を奪い逆転に成功。これを愛甲が粘り強いピッチングで守り、決勝戦進出を果たしたのである。

 決勝戦の相手は早稲田実(東東京)。夏の甲子園史上初の“京浜決戦”となった。しかも早実のエースはこの大会、彗星のごとく現れた1年生右腕の“アイドル投手”荒木大輔(元・ヤクルトなど)。しかもこの荒木、ここまでの5試合で44回3分の1を投げ、まだ無失点だったのだ。試合は当然、この大会を代表する左腕と右腕の投げ合いになると思われたが、決勝までの激戦の連続の影響なのか、両エースとも序盤でKOされ、横浜は川戸浩、早稲田実は芳賀誠という控え投手同士の投げ合いとなった。結果、6‐4の打ち合いを制した横浜が夏の甲子園で初の優勝を飾ったのであった。

 この第100回大会、横浜は優勝候補の一角に推されたが3回戦で金足農(秋田)の前に逆転負け。2010年代で優勝するために残されたチャンスはあと1回しかない。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

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