「もちろん安倍総理が優位なのは間違いありません。しかし、まだ100%勝負が決まったわけではない。何が起こるかわからないのが選挙です」
と波乱含みを読み解く、政治評論家の鈴木哲夫氏があとを引き取る。
「安倍総理が国会議員票を7割固めたと言われていますが、これはしょせん派閥の足し算でしかありません。細田派、二階派、麻生派の結束は強いと見ますが、一方で岸田派は割れています。出馬を予定していた岸田文雄政調会長(61)が一転見送ったことで、『出馬して存在感を示すことで次がある。禅譲などありえない』と、一部議員から不満が出ているからです。一部は石破票に回る流れ。すでに竹下派は衆院が安倍、参院が石破と2分していますが、無派閥議員に影響力を持つ菅官房長官が動けば、『石破支持』の国会議員票はかなりの底上げを図ることが見込まれる。国会議員票で負けていても、地方票では分のある石破さんには、いい勝負ができる可能性があるんです」
つまり、一陣の風が吹けば、形勢は一挙に逆転となる可能性を残しているというのだ。この派閥の論理を崩せるキーマンとして名前が挙がるのが、小泉進次郎筆頭副幹事長(37)である。
「永田町のある国会議員は『進次郎の決断は、100票を動かす影響力がある』と見積もっています。つまり進次郎氏が石破支持を打ち出せば、国会議員、地方票、合わせて100票の浮動票が流れる可能性があるわけです」(鈴木氏)
12年の総裁選で石破候補に1票を投じた進次郎氏こそが、石破氏の最後の切り札になるというのだ。
「もりかけ問題では石破氏と同調するように安倍批判を展開したのが進次郎氏です。もちろん石破氏は、進次郎氏を頼みとばかりに秋波を送り続けている。今回の総裁選では政策論争で勝機を見いだそうとしていますが、公約として打ち出した『石破ビジョン』には、しっかり進次郎氏が取り組んでいる国会改革を盛り込んでいる。進次郎氏が石破支持を表明し、2人で街頭演説をかませば風は吹くはずです」(国会担当記者)
むろん、石破氏にとっての「暗黒シナリオ」を思い描く安倍総理が、この動きを、指をくわえて見過ごすはずもない。
「進次郎氏はこれまで何度も安倍内閣への入閣を要請されているが、『まだぞうきんがけが済んでいない』と固辞してきた。これは、大臣ポストを安請け合いすれば先輩議員から反発を食らうことを知っているからです。あくまで自分の立場をわきまえ、人気におごらない。この絶妙なバランス感覚が進次郎氏の持ち味でもある。『いずれは総裁に』というのが党内の一致した見方ですが、一方で『今の進次郎に足りないのは経験』との評価もなされているんです」(政治部デスク)
09年の初当選以来、自民党青年局長、復興大臣政務官、自民党農林部会長、そして現在の筆頭副幹事長と、若くして要職を駆け上がってきた進次郎氏だが、入閣経験だけはいまだない。
「8月16日に、安倍総理は別荘のある山梨で麻生氏、森喜朗氏(81)、そして小泉純一郎氏(76)という、歴代総理経験者を集めてゴルフを行っている。その際、父・純一郎氏に『いずれは進次郎に総裁を任せることになる。その前に、党内からの異論が出ないように重要ポストを経験することが必須だ』と進次郎氏の入閣を打診したのです。なんでも、差し出されたポストは内閣府の担当大臣のほか、財務、国交など重要官庁の副大臣など、まさにお好きなイスをどうぞという厚遇ぶりだったそうです。ふだんは脱原発など反安倍色の強い小泉さんでも、さすがに息子の将来を考えるとうなずくしかなかったようです」(選対関係者)
石破氏を叩き潰すコマになる確約として、進次郎氏がついに安倍内閣へ入閣するのだろうか──。