五十六さんがボクサーなら、最初はポイントを取るけど、そのうち攻められて負けちゃうタイプだな。ちょっと守りがうまい選手なら、うまいことおびき寄せて出てきたところを迎え撃って簡単に倒せる。その証拠に、真珠湾攻撃ではうまくいったけど、いったん負けだしたら、どんどん相手のいいようにやられちゃったでしょ。最初の1、2ラウンドだけ威勢がよくてあとはダメな選手じゃ、試合に勝てないよ。
そもそも真珠湾攻撃だって、アメリカにおびき出されたんでしょ。ルーズベルト大統領は日本と戦争したかったけど、国会や世論が反対してたから、「そうだ、日本から先に攻めさせればいいだろう」ってことで、そう仕向けた。あれはアメリカの「片八百長」だっていう話だからね。そもそもアメリカには、日本がいつ真珠湾を攻めるかという情報が筒抜けだったらしいよね。そんなところに日本が攻めてっちゃったもんだから、飛んで火にいる夏の虫。アチチ、アチチと郷ひろみの歌でさ。アメリカとすれば「待ってました!」だな。ルーズベルトさんの読みどおり、真珠湾やられたことで「日本やっつけちゃえ!」って世論がまとまって、戦争に持ち込んだ。
アメリカはそうして戦争に引き込んだ日本相手に、最後は原爆を落としたんだからね。原爆の威力がどの程度のものか、実際に落として試したかったんだろうな。それとともに原爆の威力を見せつけることで、ソ連に圧力をかけるっていうメッセージの意味もあったわけだよ。そう考えてみると、日本は真珠湾攻撃からアメリカにいいようにやられちゃったわけだな。
五十六さんの最期はブーゲンビル島に視察に行った帰りに米軍機に撃ち落とされちゃったよね。俺はブーゲンビル島に行ったことがあるけど、海の中にポツンと浮かんでる南国の小島だ。あんな島に護衛機も大してつけないで飛んでいったら「どうぞ撃ち落としてください」って言ってるようなもんだよ。丸腰なんだから。部下が「もっと護衛機をつけたほうがいいですよ」って進言したら「大丈夫、大丈夫」って、言うこと聞かずに飛んでっちゃった。
一説には「自殺じゃないか」なんて言われてるけど、そうじゃないよ。普通ならだよ、そんな島に飛んで行ったら「危険が危ない」ってわかるはずだよ。「自分は大丈夫だろう」っていう、おごりだな。頭がよかった反面、自信過剰が仇になったんだな。
一方の陸軍トップの東条英機さんも頭はよかっただろうけど、トップに立つ軍人としては、これまた「武」が足りなかったね。当時の日本軍は陸軍大学や海軍大学で成績のいい順に「お前は大将。お前は中将」なんて振り分けてたんでしょ。でも実際に戦争となったら、そんな頭でっかちの組織じゃ、勝てるわけないっつーんだよ。