もし幕末の時代に俺もいたら、西郷さんと勝さんを呼んでゴルフやったね、江戸城で。今の皇居には9ホールだけあるらしいね。一緒にゴルフやれば気心知れるからさ。西郷さんと勝さんも一緒にゴルフやれば、手打ちしてたんじゃないの。角突き合わせて難しい話しなくても。
それにしても徳川慶喜がよかったのは、いいところのお坊ちゃんだったってことだね。往々にしてお坊ちゃんというのは「自分」を持ってない。ある面では、自分を持ってないっていうところが生きる知恵だったんじゃないのかな。「俺が俺が」で出ていってたら、きっと殺されてたと思うね。幕府が滅びたんだから、将軍なんていつ殺されたっておかしくないからね。勝さんみたいな優秀な取り巻きの言うことを聞いて、生き延びられたんだから。30歳の時に大政奉還して、76歳まで自分の好きなことやって天寿を全うしたわけでしょ。幸せな人生だよね。
慶喜さんもね、初代の家康から続く「将軍」というバトンを預かったわけだからそれを次の世代につなぎたかったと思いますよ。幕府は倒れたけど徳川家は守った。会社は潰れたけど、自分の家族と家は守ったようなもんだね。将軍も15代にもなると、もう時代と合ってなかったんだろうね。そう考えれば、徳川の時代は終わる運命だったんだな。
それにしても勝さんみたいな人は、「我がよければいい」という今の時代に最も欠けてる人材じゃないの。幕臣は今で言う官僚でしょ。官僚なんて国民からいかに税金を多く取って、自分たちが楽して生きていくかってことばっかり考えてる連中だらけ。50歳や55歳で辞めて、天下り先が2、3個あって、そこも辞めるたびに退職金もらって。それを全部、自分たちが法律で決めていくわけだ。都合悪いことがあれば、全部上の責任にしてベラベラしゃべる。
「勝海舟を見習え」
今の官僚たちにそう言いたいね。
明治維新から150年がたった。アメリカと戦争やって焼け野原になって、日本はそこからなぜ、ここまでの先進国になったか。それは昔の日本には西郷さんや大久保さんや勝さんみたいな気位の高い人がたくさんいたからだよ。彼らの精神が末裔までつながってきてるから、今の日本がある。今の日本の基礎を作ったのは、この人たちなんですよ。
でもこれから50年、100年先の日本はどうなるのか。気位の高い人たちの精神が消えてなくなってきてる。日本の生きざまというか、方向性がないわけですよ。幕末、明治維新の志士たちが見たら悲しむだろうね。西郷さんは今の日本に、こう嘆くんじゃないの。
「これじゃ、OK牧場じゃなくて、NO(農)場だ」って。