東京五輪開幕に向けて準備が進む中、あれよあれよと膨らむ「大会運営費」。経費削減は口先だけで、組織委員会の役員はガッポリ報酬を受け取り、事務所の家賃は億単位。それでは無償のボランティアが集まるはずもなく、中高生にも動員指令を出す始末。国民に負担ばかり強いる“カツアゲ”五輪を緊急審議する!
「ボランティアの方々の協力をいただき、世界中の国や地域から訪れる選手や観客の皆さんをおもてなしの心で明るく迎えたい。力を合わせて歴史に残るすばらしい大会にしましょう」
8月31日、東京五輪のボランティア説明会が初めて開かれ、準備局の担当者が壇上から来場者に向けてこう呼びかけた。東京五輪では、競技運営や選手村などに携わる「大会ボランティア」を8万人、都内の空港や観光地で案内役を務める「都市ボランティア」を3万人募集する予定だ。
「説明会の会場は約250名が入れて、参加者募集から3日で満杯になりました。9月初旬に行った第2回目の説明会の募集では数時間で定員に達し、その後も問い合わせの電話は多いです」(五輪関係者)
あまりの反響に驚いているようだが、一方で東京五輪のボランティア参加条件について、「ブラック企業並み」などと物議を醸している。それもそのはずで、3月に大会組織委員会が募集要綱案を発表すると、1日8時間10日間以上の活動、宿泊場所の提供なし、交通費は自己負担など、炎天下で馬車馬のように働かされる内容に批判が殺到したのだ。
「これに慌てた組織委は6月になって、交通費の一定額の支給や連続での活動は5日以内など、待遇を緩和した条件を発表して騒ぎを収めようとしています」(スポーツライター)
それでも、五輪開催までの研修期間中は交通費が無支給など、ブラック体質は変わっていない。ジャーナリストの須田慎一郎氏も苦言を呈する。
「大前提として、ボランティアの存在がなければ、今や五輪は成立しません。組織委は市民も五輪に携われることを盾にするような、上から目線の参加条件を出していますが、協力する側の気持ちを全然理解していないのでしょう」
前回の16年リオ五輪では、配給された食事がパサパサのパンとお菓子ばかりで、それに嫌気が差したボランティアが相次いで“脱走”。人手が足りなくなり、有償でスタッフを集めるハメになった。
そもそもボランティアの意味は、「無償」ではなく「志願者、自発的」といったもので、8月に行われたジャカルタ・アジア大会では、ボランティアに日当が支払われている。東京五輪でも参加者に支払ってもなんら問題はないはずだが、“タダ”でも集まるとタカをくくる組織委には金を出す気などサラサラないのだろう。それどころか、戦時中の「学徒動員」よろしく、半ば“強制”で学生ボランティアを集めようとしているからタチが悪い。
7月下旬に文部科学省とスポーツ庁は、全国の大学と高等専門学校に、五輪期間中に授業や試験を行わないよう配慮する「通知」を出していた。
「学生が参加しやすい環境を作りたいのでしょうが、授業のカリキュラムの編成は学校によって違います。今さら国に言われたところで、『はい、わかりました』と簡単に言うわけにはいかない。そもそも準備するには時間が足りなさすぎますよ」(須田氏)
国からの“圧力”は増長の一途だ。11万人のボランティアとは別に、まだ年若い中高生にも動員指令の手が伸びているというから笑えない。スポーツライターがこう説明する。
「サッカーやテニス競技のボール拾いや、バスケットボールのコートでモップがけを担当させる案が出ています。酷暑の不安が増している中、子供の健康を守れるのか、疑問の声が上がるのも当然でしょう」
何か起きたあとに責任逃れの言い訳だけは聞きたくないが、東京五輪のデタラメな惨状はこれだけではなかった。