──アベノミクスは本当に日本の景気を押し上げることができるのでしょうか?
それは、現時点ではわかりません。ただ、これまでは、とにかくモノの値段がどんどん下がっていくから、現金で持っているのが一番と考え、デフレになっていたわけです。ところがアベノミクスでこれからモノの値段が上がるから高くなる前に買おうと、人々の意識が変わって、お金が動きだせば景気がよくなる可能性は明らかにあるんです。ですが、まずとりあえずは先に物価の上昇が起こってくるので、給与所得者はまだしも年金生活者は大変ですよ。
──景気がよくなったとしても、その前に金欠で倒れてしまっては意味がない。
株価は上がり円安になり、とりあえずよくなるように見えるでしょう。ただ、強い薬の効果で急に症状が改善したら、そのあとで思わぬ副作用が出るという可能性がある。ものすごい強烈な副作用の可能性のある劇薬でもあるんです。
──もう一つ、安倍自民の掲げる「国土強靭化計画」についてはどうでしょう?
確かに建設業はバブル景気が起こる可能性はあるでしょう。ですが、そもそも消費税を上げてそれで借金を返そうとしたら、消費税が上がるんだからもっと借金しましょうという話になっちゃった。これは不思議な話です。
──バラまきの恩恵にあずかれればこれ幸い。期待するのはほどほどにということ?
ハハハ。安倍政権の本当の目的は別のところにあるんですよ。今回の選挙で、「なぁーんだ、民主党は全然デフレから脱却できなかったけど、自民党になったらよくなったじゃないか」となれば、7月の参議院選挙でも大勝できるわけです。
──確かに今の流れでは民主党の逆転はありえない。
そう、第一次安倍政権では参議院で負け、辞任に追いやられました。その時に「再チャレンジできる社会」というスローガンを掲げていましたが、今回やり直しができたご自身はリベンジを果たしたい。つまりは念願である憲法改正に持っていきたいわけです。
──それが国防軍ということなんですか?
ええ、ただしいきなり憲法9条改正とはいきませんよね。最初は憲法改正手続きを定義した96条から手をつけて、憲法を変えやすくする。そのあと9条を変え、自衛隊を国防軍にするという計算をしている。ですから、7月の参院選で勝ちたい、何としても自公、または維新で3分の2を確保したいわけです。そのためにはバラまき公共投資だろうが、何でもやるわけです。
──安倍政権の本音が見えてきました。
圧勝した政権には100日ルールというのがあり、マスコミは約3カ月は様子を見て批判しないことになっている。ほら、前回の政権交代の時にも鳩山総理が普天間基地の移設問題で、「最低でも県外」なんて妙なことを言っていたでしょ。私も、いつの間に奥の手を用意したんだろうとビックリしましたが、結果はあのありさまでした。はたして今度はどうなるか、じっくりお手並みを注視しなくてはいけないでしょうね。
──なるほど、次号は2013年の日本について教えてください。