これはオーナー、社台の強い「厩舎介入」に泣いた結果、と言える。いったいどういうことか。
「社台系の多くはクラブ馬ですが、着順を一つでも上げて賞金を稼ぐことが至上命令となっています。そのため、必然的に腕の立つリーディング上位の騎手を重用することになる。外国人騎手は別にすると、音無厩舎なら福永祐一、川田将雅、浜中俊、横山典弘など。松田厩舎なら岩田康成、北村友一、川田など。一流騎手騎乗は、会員からのたっての希望でもあるそうです」(競馬ライター)
その結果、特定の騎手に騎乗依頼が集中し、騎手間の格差がどんどん広がっていく。岩田や福永のように、特に社台に気に入られて「お抱え騎手」となり、何億円と稼ぐ騎手もいれば、ほとんど乗れずにバレット(騎手の馬具を整えるなど雑用をする補佐役)をして食いつないでいる騎手もいるほどだ。
「聞くところによると、『サンデーレーシング』の吉田俊介代表(38)は岩田や福永がことのほかお気に入りで、期待馬には彼らを乗せることが多いとか。恐らく、この2人と世代を同じにするせいもあるのでしょうね」(前出・トラックマン)
参考までに、リーディング上位の社台系騎乗率(全体の騎乗数に占める社台系の馬に乗った比率)をあげてみる(データは11年度のもの)。50%以上=横山典/40%以上=福永、安藤勝己/30%以上=岩田、川田、蛯名正義、北村宏司、三浦皇成、四位洋文。
騎手によって騎乗数も異なるので絶対的なものとは言えないが、彼らが社台お気に入りの騎手であることは確かだ。前出・美浦トレセン関係者が言う。
「蛯名が結婚式をあげた時の仲人は、社台ファーム代表の吉田照哉氏。だから多少の騎乗ミスをしても許されます。関東ではもちろん、社台の比較的いい馬には蛯名が乗ることが多いと思いますね」
ちなみに、その蛯名と同期の武豊の社台系比率は、20%強。武といえば、本誌既報どおり、「社台に干されている」はずだが、これは社台から買った馬を個人で預けている、いわば社台の手を離れた馬に騎乗していることから計算された数字である。
社台からはじかれていても、ラフィアン(マイネルの馬名で知られる、社台と並ぶ大手会員制馬主クラブ)に見込まれている津村明秀、丹内祐次、大野拓弥といった騎手はまだいいが、それ以外の若手、中堅騎手の未来は暗いようだ。
競馬界における、社台一強時代は、2013年も盤石の気配である。