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武豊 4000勝の「初耳“裏”トリビア」18(2)海外から持ち込んだ数々のモノ

 武のデビューは87年。その競馬人生は、日本が国際化への道を歩んできた歴史とほぼ重なる。

「日本競馬界の進歩は、武が早くから海外に目を向けたことと無縁ではないでしょう。デビュー2年後の89年には、馬主のバックアップもあって初のアメリカ遠征を果たし、海外初勝利を挙げています」(競馬サークル関係者)

 その後は毎年のようにイギリス、フランスなどに渡り、本場の競馬を肌で感じてきた。その「成果」は計り知れないものがある。

「まず、騎手のあり方が大きく変わりました」

 と明かすのは、スポーツ紙競馬担当記者である。

「例えば、騎手の勝負服は体にピッタリとしたエアロフォームがほとんどですが、これなども武が初海外遠征先のアメリカで見て『これはいい』と日本に持ち込んだもの。初めて着用したのは89年秋の阪神でしたが、効果てきめん。空気抵抗を受ける度合いが減って、接戦を次々とモノにしていきました。その結果、デビュー3年でリーディングを取ることができた」

 それだけではない。騎手の補助業務をするバレットも海外で実際に見た武が持ち込んだものだ。日本ではまだ10年ぐらいと歴史は浅いが、今や欠かせない存在となっている。ベテラン競馬ライターが言う。

「武は騎手デビュー前に、兄弟子の河内洋(現・調教師)の身の回りの世話をしていた。その経験から、早くからバレットの必要性を感じていたのです」

 今や見習い騎手が海外修業をすることは当たり前となっているが、これも武が長期にわたって海外遠征をし、現地で日本人騎手が騎乗できる基盤をしっかりと築いてきたおかげだ。

 忘れてならないのは、「世界のタケ・ユタカ」になるにつれ、海外の騎手が日本の競馬に興味を持ち、来日して騎乗したがるようになったこと。ペリエなどは武の口利きで日本の馬主や調教師を紹介され、乗り始めた。ペリエは「日本でたくさん勝てたのは豊さんのおかげ。恩人です」と語っているが、決してオーバーな発言ではない。

 順風満帆な競馬人生を歩んできたかに見える武だが、つまずきも、珍プレーもあった。さらに、ファンをアッと言わせた万馬券も演出してみせた。

 まずは、そのレースがきっかけでコースを直すまでに至った、91年秋の天皇賞から見ていこう。

 武が騎乗した1番人気メジロマックイーンは、1コーナー過ぎのポケットからスタートすると、最初のコーナーを内側に切り込むように回ったことで他馬に迷惑をかけ、1着から最下位へ降着。騎乗停止処分も受けることになった。判定が出るまで20分を要する難しい裁決。結局、ラフプレー扱いで決着したが、それでコトは収まらなかった。

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