テリー フジテレビにアナウンサーとして入社するのって、実際かなり大変なことですよね。
牧原 特に女性アナウンサーはそうですね。ひと頃は受験者が2000人とも3000人とも言われていましたから。私が受けた時、男性は500~600人ぐらいだったような気がします。私はそこで運を使い果たしましたけども(笑)。
テリー いやいや、600人の中からだって、十分すごいですよ。どんな試験内容だったか、覚えていますか?
牧原 面接は、基本3対1で行いますね。アナウンサー、そして部長クラス2人が試験官を担当して、私の時は露木さんに言われて、社会党委員長だった佐々木更三さんや田中角栄さんのモノマネをしましたね。たぶん特技の欄にそれを書いていて、おもしろがられて振られたんじゃないかと思います。
テリー へぇ、モノマネがうまいとフジに入れるのか。
牧原 いえ、それだけじゃさすがに無理ですよ。面接だけでも、5次か6次までありますしね。
テリー そりゃ確かに狭き門だ。どういう人が選ばれやすい、みたいな傾向ってあるんですか。
牧原 私も面接官を経験したので、その印象も踏まえると、やはり存在感のある人ですかね。特に女性の場合は。部屋に入ってきて座った感じの華やかさというか‥‥。
テリー ああ、それは実際に会わないとわからないよね。
牧原 かといって、あまり出来上がった感じでもいけないんですよ。新鮮さというか、「なんとなくおもしろそう」と思わせる“何か”が欲しいですね。
テリー 今の女子アナ志望の子って、大学のミスコンで優勝するようなかわいい子ばっかりだし、選ぶのもけっこう悩んだりするんじゃないですか。リクルートスーツで、見た目の均一感も高そうだし。
牧原 女性アナウンサーの場合はそうでもないです。黒じゃないほうがむしろ多いかな。
テリー じゃあ、ピンクとか白とか、爽やかな‥‥。
牧原 そうです。本人に似合っていれば、別にリクルートスーツである必要はないですね。最近では、後半にあるカメラテストを意識して、ちょっと明るめの色にしたりする傾向はありますね。僕らの時代より、今の若い子はいろいろ考えて来ていますよ。
テリー アナウンサーを目指している子は、当然フジだけじゃなく他の局も受けていますよね。そうすると、最後まで残るのは、どの局も同じ顔ぶれってことにはならないんですか。
牧原 あ、それはありますね。だいたいチェックするところは、どの局も一緒でしょうから。でも、最終的には受験者の意志を尊重しますので、縁があればということになりますけどね。
テリー なるほどね。俺も歌番組なんかで審査員をやったりしているから、こういう話を聞いていると、身につまされるんですよ。先に会った子に高い点数をつけちゃうと、そのあと出てくるもっとすごい子の点数はどうすればいいんだろう、みたいな悩みがあったりしてね。
牧原 ああ、わかります。テリーさんの場合は、決定までの時間も短いし、確かに悩みますよね。僕らの場合は対応する人数も多いですが、試験官やブースも多いので、責任も分担できるから、まだ気が楽かもしれません。とはいっても、もちろん真剣に選んでいますけどね。
テリー 結局は、さっき牧原さんが言った“縁”なんだろうねェ。そこもまた、アナウンサーが求められていることなんだろうな。