稀代のスラッガー・松井秀喜の衝撃的な引退会見は年末の大ニュースとなったが、注目される「今後」を巡っては巨人が早くも「監督手形」を切るなど、復帰工作に必死の様相だ。だが、当の本人にソノ気はなし。何しろ、どうしても日本に戻りたくない事情があるのだ。
20年間のプロ生活で日米通算2643安打、507本塁打の記録を残した松井秀喜(38)の引退会見がニューヨークで開かれたのは、昨年12月27日(現地時間)だった。その直後から、古巣巨人の白石興二郎オーナー(66)、渡辺恒雄球団会長(86)が「次期監督」候補にと、全面的なバックアップを表明。指導者として日本球界復帰の道筋が早くも整ったかに見えた。
ところが、そんな巨人の思惑とは裏腹に、松井自身の胸中は「戻らない」決意が固いという。その背景には、松井をよく知るマスコミ関係者の間でタブー視される秘密事項が存在しているのである。
これまで松井は、年末年始は帰国して故郷・石川で過ごすのが恒例だったが、今回は自宅のあるニューヨークで年を越している。08年3月に結婚した8歳下の夫人が第一子を妊娠中で、3月中旬に出産予定であることがその理由だった。だが、出産後もアメリカで生活、巨人の「オファー」を直ちには受けられない状況にあるという。米在住ジャーナリストが明かす。
「夫人は極度のマスコミ嫌いで、これまで顔はもちろん、名前すら公表していません。絶対に公の場には出たくない意向で、写真を撮られるのもNG。もし日本に戻るとなると、マスコミの注目の的となるのは避けられません。夫人を徹底的に隠さなくてはならない松井にとって、アメリカにいるほうが好都合なのです」
夫人がいかに人目を嫌っていたかについては、エピソードに困らない。松井がかつて所属していたヤンキースの関係者が語る。
「夫人は松井の両親とも球場で一緒に観戦しようとしなかった。写真を撮られてしまうからです。遠征先では試合後、レストランなどで食事をとりますが、夫人の強い要望により、松井とツーショットでは絶対に歩きませんでした。これも写真を撮られたり目撃されたりするのが嫌だからです。だから夫人は隠れるようにして街を歩き、レストランで待ち合わせをする。松井は夫人のことを話したがっていましたが、『絶対に出たくない』と強硬に主張する夫人とケンカになることもあった」
夫人は新聞での松井発言もチェックしており、自宅でどんな手料理を食べたかなどの記事が出ると松井に電話して、「またこんなことをしゃべって!」と怒ったという。家庭内の出来事に触れるのもタブーなのだ。
これには周囲も振り回されたと、11年に所属したアスレチックスの関係者は言う。
「例えば、夫人が試合を見に来るとなると、マスコミの目に触れないよう、顔を見られないように、報道陣の動きにも制約が加わりました。松井と連れ立って駐車場まで歩いて車に乗るところでは、そこに報道陣がいてはいけないし、広報担当もそうしむけなくてはなりませんでした」