「ここで毎日、家庭用品などを無料配布して客を集め、会場では楽しい話と演出で盛り上げる。高齢者の中には毎日誰とも話さず、孤独な生活を送っている人も少なくありません。そんな人たちを笑わせ、楽しませ、雰囲気に酔わせることで冷静な判断力を奪い、高額な健康食品を買ってもらう。それが催眠商法の独特の手口です」
こう語るのは、催眠商法の元講師で「あやしい催眠商法 だましの全手口」(自由国民社)の著者であるロバート・熊氏(以下「」は同氏のコメント)。1970年生まれのロバート氏は経理の専門学校を卒業後、事務、営業、建築、飲食など職業を転々とし、20代後半からの6年間、関西にある催眠商法の会社に勤務。「営業成績優秀者」として、何度も会社から表彰された人物だ。
「求人広告には『健康食品の開発・販売』とだけあって、具体的な内容は書かれていませんでしたが、健康食品を扱う会社ならなんとなく安心かな、と思って電話すると、即面接に来なさいと」
面接にパスしたロバート氏は数日後、ファミリーレストランで上司と待ち合わせ。連れていかれたのが、コンビニ跡地に建つ「自然食品の店」。それが全ての始まりだった。
「ここで『健康ライフセミナー』といった名目で、講師が講演をするんです。時間にして90分ほど。隣にはアシスタントと称する従業員が座って、場を盛り上げる。200人ほどの客に対し、講師1人とアシスタントが3~4人。講師が話術で盛り上げるんですが、話の9割は商品とは関係ない世間話です。で、お客が食いついてきたら、今度は話の合間に『ハイ』と相槌を打たせ、それを繰り返す。『せ~の、ハイ! もう一丁ハイ! それ、ハイ、ハイ、ハイ!』みたいな感じです」
実はこの「ハイ!」がのちに「今日は来てよかったですか?」「ハ~イ!」「私の話、わかってくれましたか?」「ハ~イ!」「本来なら60万円するところが、今回だけ特別30万円になりました。買いますか~?」「ハ~イ!」となっていくのだが、むろんその時点で、客はそれを知る由もない。
さらに会場を二つに分けて「トイレロール早巻きゲーム」など、簡単なゲームをしてバンザーイと手を上げさせたり、高齢者に声を出させ、笑わせ、体を動かすことで会場を一体化させ、警戒心を解いていく。
「話術で会場を熱狂させ、正常な判断力を奪う。そして‥‥」