ハイテク化が進み、AIが登場する世になっても、「悪徳業界」ではいまだに原始的な方法で人の弱みにつけ込む手法が健在だ。その代表的な手口として知られる「催眠商法」の「元エリート講師」が懺悔の念を込めて全暴露するのは、さながら催眠術のごとき集団操作、マインドコントロール術だった。
顧客約6800人、負債総額約2400億円──。磁石を埋め込んだ健康グッズの預託商法を全国展開し、経営破綻した「ジャパンライフ」が11月12日、都内で第1回債権者集会を開催した。会場には債権者やその代理人弁護士など、約300人が出席。顧客からは返金を求める声と同時に、山口隆祥会長の責任を問う声が続出した。
「ところが山口会長は憮然とした表情で『私はあなた方にいい商品と健康を与えてきた。その恩を忘れたのか!』と逆ギレ。この発言で、会場内が騒然となったことは言うまでもありません」(全国紙社会部記者)
破産管財人によれば、土地や建物など、回収できた資産はわずか約4億円にすぎず、顧客らへの配当は不可能だという。社会部記者が続けて説明する。
「ジャパンライフの商売は、磁気ネックレスなどを数百万円で顧客に売りつける一方、同社がそれを第三者に貸し出すことで、顧客に年6%のレンタル料を支払うという仕組み。昨年、愛知県内の被害対策弁護団が同社と山口会長らを、詐欺などの疑いがあるとして、告発状を県警に提出。現在、警視庁と愛知県警が中心になり、特定商取引法違反容疑などでの立件を視野に、捜査が進められています」
弁護団によれば、ジャパンライフの被害者は80代が4割と最も多く、続いて70代が3割、60代と50代が各1割程度とされる。国民生活センターに寄せられた17年度の相談件数を見ても、シニア世代を狙った多くの悪徳商法が暗躍していることがわかるのだ。
「悪質セールスの被害を受けやすいのが、単身高齢者。一人暮らしはどうしても孤独になり、優しくしてくれる人の要望にはできるだけ応えようという心理が働きます。で、不要だと思いつつも、断れず購入してしまうケースが多いのです」(国民生活センター関係者)
とはいえ、相談が寄せられるのはごく一部で、多くの高齢者は「恥ずかしいから」「お金を払ったことがわかったら息子に怒られる」といった理由で泣き寝入りしているケースも多い。悪徳業者たちはそうした高齢者の心理を巧みに利用し、手を替え品を替え、ひたひたと忍び寄ってくるのだ。
シニア世代の心理を読み取り、まるで催眠術にかけたかのような手口で数十万円という高額な健康食品などを売りつけていくのが「催眠商法」と呼ばれるあくどい商法。コンビニの跡地などに「自然食品」「健康食品」などと書かれた旗がズラリと並び、多くの高齢者が集まっている、そんな光景を見かけることがあるはずだ。