先の自営業者が引っ掛かったのは「副業タイプ」のネット詐欺だ。
昨今の副業ブームに乗じて〈在宅ワークで1日10万円〉〈スマホカメラで写真を撮るだけで月収30万円〉といった破格の条件で広告を出し、「儲け方のマニュアル」や「専用ソフト」を売りつけるのが手口である。
こうした詐欺の場合、こちら側から悪徳業者に接触しなければ被害に遭うことはないため、対策としては「甘い言葉に乗せられないこと」が防御法の全てだが、自覚の有無にかかわらず牙を剥く詐欺もある。
年々、手口が巧妙化しているのがアダルトサイトに関する「脅迫タイプ」のネット詐欺だ。
古くから〈サイトの使用料が生じた〉との画面が突然表示され、支払いを求めるアダルトサイトの架空請求が流行したが、この9月から急増しているのが〈入金しなければ遠隔操作によりパソコンの前面カメラで撮った「あなたがアダルトサイトを閲覧している姿」の動画をばらまく〉との脅迫メールなのである。
当然、そういった動画は存在しないのだが、この詐欺メールに特徴的なのは〈あなたの情報が漏れています〉として「実際に自分が使っているパスワード」が併記されていること。
過去に各種ネットサービスで発生した「情報流出事件」でパスワードを入手して送信しているワケだが、詐欺グループのもくろみは大当たりで、ネット初心者であるシニア層を中心に、被害が拡大している。
仮に本当の個人情報が記されていたとしても、ネット上での脅迫には無視を決め込むのが鉄則である。
スマホのSMS(ショートメッセージサービス)を使った「錯覚タイプ」のネット詐欺も流行。中でも被害が深刻なのは、「佐川急便」をかたったものだ。
〈お客様宛にお荷物のお届けにあがりましたが不在の為持ち帰りました〉と記したメッセージに〈sagawa〉の文字も入ったURLへ飛んで確認することを促されるのだが、クリックして表示されるのは本物そっくりの偽サイト。カード番号など個人情報を抜き取られる被害が続出しているのだ。
こうした判別しようもない手口には、手間はかかるが、個人情報を入力する前に送られてきたURLをネットで検索してみるといった対策を講じるしかない。
巧妙化する手口について、ネット詐欺グループの元メンバーに聞くと──。
「グループの連中は“IT企業気取り”だよ。毎週の定例会議で『新しいダマシの手口』を発表し合って、いいアイデアがあれば即日動きだす。大儲けにつながる手口を考えたメンバーには“社長賞”が出ることもあった。ネットに弱いうえ、大金を持っている中高年がターゲットになるのは必然だよな」
シニア層には、毅然とした自衛が切に求められている。
(ジャーナリスト・本折浩之)