インターネットを活用するシニア層の増加を背景に、中高年を狙い撃つ巧妙な手口のネット詐欺が激増している。これを知っておかなければ、悲惨な目に遭う可能性が──。
NTTドコモの調査によれば、ついに今年、60代のスマートフォン保有率が5割をオーバーした。
現在、自宅でのパソコン使用を含めると60代が9割以上、70代でも6割以上が日常的にネットを活用していると見られている。
ネット詐欺グループにとって最もダマしやすい格好のターゲットが、中高年のネット初心者なのだ。
本記事では、巧妙を極めるネット詐欺から身を守るための対策を、当事者による証言と併せて紹介しよう。
「この1年の間にネット上で合計500万円以上ダマし取られてしまいました」
と嘆くのは50代の自営業者だ。以前から、本業のアパート経営だけでは生活が苦しかったため、ネット上で簡単にできる副業を探していたという。
そんな中、「メールアドレス収集ビジネス」をうたった業者の広告を見つけ、サイト上から資料請求を申し込むまではよかったが──。
「専用ソフトを使って、世界中の経営者のメールアドレスをネット上から収集し、そのアドレスを業者が『1アドレス5000円以上』で買い取ってくれる“営業サポートビジネス”だと聞いたんです」(自営業者)
都内の喫茶店で業者から説明を受け、「ソフトを使えば膨大なメールアドレスが集まる」「誰でも月に30万円は儲かる」「不満があれば全額返金を保証する」と聞かされて、60万円で「メールアドレス収集ソフト」を購入。業者の自信あふれる態度を見て、「正直、かなり期待していた」と言うが、待ち受けていたのはとんでもない結末だった。
「そもそもソフトを立ち上げてもメールアドレスが一つも集まらない。業者にクレームを入れたところ、『時期によっては“補助ソフト”も同時に動かさないと成果が出ない』と言われ、90万円の補助ソフトの購入を勧められました」
ちゅうちょしたものの「全額返金保証」の約束を真に受けて、追加購入に踏み切ったが、さらに追い打ちをかけられる事態に発展してしまったのだ。
「補助ソフトを同時に動かしても、1日多くて2件ぐらいしかアドレスが集まりません。さらに業者に買い取りをお願いしても『現在の買い取り単価は500円』などと話にならない。返金を持ちかけても『期限切れ』の一点張り。やっとダマされたことに気づきました」
被害はこれだけでは収まらなかった。
「『メールアドレス収集』をやめたあと、どこで調べたのか『今回の損失を取り戻してみませんか?』といった連絡が別の業者から来るようになったんです。いわく『あなたが引っ掛かったのは有名な詐欺業者で、ネットビジネス業者の威信をかけてあなたを救済したい』とのこと。当時、非常に落ち込んでいてワラにもすがる思いで連絡してしまったのが間違いでした」
結局、3業者から合計500万円以上ダマし取られたというのである。
(ジャーナリスト・本折浩之)