一刻も早く、治したい──。病に伏せれば、誰もがそう思うはずだ。しかしながら、長嶋氏は現在82歳。大病を患っての長期入院となれば、残念ながら一気に気持ちが萎えてしまっても不思議のない年齢だ。それでも長嶋氏の気力がいささかも衰えず、尋常ではないほど退院と現場復帰に対して執念の炎を燃やす理由ははたして奈辺にあるのか。
長嶋氏に近い関係者は、
「自分に関する死亡説や病状悪化説がささやかれていたことを病床で(次女の)三奈さんらから聞き、『いったい、何を言っているんだ?』と憤慨して“絶対に元気になってやろう”という気持ちになったという話もあるが、それよりも‥‥」
と、せきを切ったように語りだした。
「新たに就任した原(辰徳)監督(60)の存在ですよ。ミスターは表向きは応援しているが、近年は若干距離を置いている。というより、『置かれている』という表現のほうが適切だ。断っておくが、2人は師弟関係にあるから、仲が悪いというわけではない。ただ原が第2次政権の時、『いつまでも長嶋さんに頼ってしまうようなジャイアンツでは同じ歴史の繰り返しになってしまうし、それではいけない』などと周囲に説いて、『ミスター離れ路線』の確立を図った。それが証拠に、以降は巨人でミスター絡みのイベントも減ったはず。でもミスターは、なんだかんだ言っても出たがりだからね。こういう原のアイデアをいい意味での一本立ちとしては解釈できず、逆に『俺から離れるのか』とイコジになってしまったところもあった。そういうボタンのかけ違いによって両者の微妙な距離感が生じてしまったのも事実。だから今回も自分が入院している間に、原が監督として再々登板する形になったのは内心、相当にじくじたる思いがあるはず。つまりは『打倒・原』こそが元気になるための原動力となっている。そうみていいと思う」
ましてや、みずからが強力にプッシュしていた高橋由伸前監督(43)が成績不振の責任を取って志半ばでの辞任へと追い込まれた。その後釜にギクシャクした関係の原監督が全権を掌握して座り、巨人で幅を利かせようとしている。これまでの経緯を考えれば、長嶋氏にも「おもしろくない」との思いが芽生えたとしても不思議ではない。是が非でも元気になって再び現場に立ち、原監督の眼前で「俺はまだまだ死んじゃいないぞ」と、自身の健在ぶりをアピールしたいところだろう。