胃腸の疲れに加え、長期間のデスクワークや立ち仕事は「不良姿勢」と呼ばれる状態を招きやすい。これは腰をはじめ、全身の関節に大きな負担をかけることになる。石垣氏によれば、
「腰痛の主原因はメンタルと筋肉および骨格、そして内臓の3つにあります。特に飲みすぎなどで内臓の機能が低下した場合には腰背部が緊張し、さらに不良姿勢によって腰に負担がかかり、腰痛を悪化させてしまう場合もあります。この時はダイレクトに腰周辺をもみほぐすことも効果的ですが、深部の関節や内臓に不調があると、周囲の筋膜まで緊張して硬くなっている。そんな場合はただ指を入れてほぐすのではなく、腰回りの皮膚と皮下の筋膜をつまんで、そのまま5~10秒ほど圧力をかけながら位置を上下にズラすと、より効き目を感じられるはずです」
腰のツボは腰周辺だけでなく、お尻から腿裏、膝裏、アキレス腱にもある。
「かかとと腰は筋膜でつながっているので、これらの部分の緊張が腰痛の原因になることもある。ですから、すねへのアプローチも大切になります」
すねの下にあるアキレス腱なら自分でももみやすい。この部分の緊張をほぐすだけでも、腰痛改善に効果があるという。ただし、圧の強さが重要なようで、
「いきなり強い圧をかけるのではなく、ちょっとずつ強くしていき、自分の中でやりすぎじゃない範囲を見つけていくほうがいい。力が弱ければ効かないし、強すぎれば悪化しますから、自分なりのさじ加減を見つけることがポイントになります」
圧をかける際、ペンや棒などの道具を使ってもかまわないが、微妙な力加減や角度を考えると、やはり人間の指に勝るものはないのだとか。
「指の表面は柔らかくてもその奥に芯があり、それで強弱をコントロールできます。さらに手の温かみも重要な要素になります」
早く治したいばかりに、焦ってグイグイ押すのは禁物だ。
「例えば、筋肉の繊維があった場合、横断してまたぐようにゴリゴリすると、刺激が強くなり、筋肉の緊張が緩み、効いたような感じがします。ところが、筋肉繊維を痛めやすいため、もみ返しがくる場合があります。ですから、動かす場合はゆっくり優しくが基本。血流が低下し、それがシコリになった状態を『硬結』と言いますが、これが悪化すると痛みが出てくる。なので、もみほぐす場合は、この硬結をとらえるイメージで行ってみてください」
腰痛とはいかなくても、腰や首の張りが気になっていたので、さっそく「アキレス腱もみ」を実践してみると、背骨全体がじんわりと温かくなり、症状の改善を実感できた。
もうひとつ、石垣氏が勧めるツボ押しのタイミングが、入浴時や入浴直後だ。
「体が温まって血行がよくなっているので、ツボ押し効果がより現れやすくなります」
忘れてはならないのが、マッサージ後の水分補給だ。石垣氏が締めくくる。
「ツボマッサージのあとは体全体への血の巡りがよくなるため、お茶でも水でもかまいませんから、水分をとること。ツボ押しによって流れ出た老廃物を、尿としてできるだけ早く体外へ排出するためには、水分補給が重要になります」