食欲は戻った。腰の調子も万全で、腎臓もいたわっている。だがそれでも、なんとなく頭がスッキリしない。そんな時に実践したいのが、寺林氏が推奨する「頭蓋骨マッサージ」だ。
「私はこれまであんまマッサージ指圧師、鍼灸師として2万人を超える患者さんを診てきましたが、ほぼ全員に共通していたのが『頭』のコリ。頭蓋骨と頭皮の間には『前頭筋』や『後頭筋』といった筋肉があり、周辺には微細な血管や神経がたくさん走っていますが、ストレスを感じると筋肉は緊張し血管が収縮します。それが放置されたままの状態だと、コリが脳の血管や神経を圧迫。結果、肩コリや首痛、睡眠障害、眼精疲労を引き起こすことになります」
そこで、寺林氏が頭蓋骨マッサージを患者に試したところ「肩コリや目の疲れが取れた」「不眠症が解消した」などなど、大きな反響があったという。
「ただ、私が施術する場合は、患者さんが寝ている状態なので、頭の後ろにある『あ門』(後頭部の中心線上、生え際からやや上にあるツボ)から始め、『天柱』『完骨』と外側にもんでいくのですが、自分で行う場合は、真ん中から外に行くと『引く動き』になるため、力が入りずらいんです。しかし、外側の『完骨』から始めれば内側に絞るように入るので、自然に圧が加わる。ですから、自分で行う場合は外から内側にかけてもんでいくように、と指導しています」
自分の目が届かない後頭部のマッサージは少しハードルが高そうだ。そこでおすすめしたいのが、後頭部と並んでコリが発生しやすい耳の上とこめかみ部分のマッサージだ。
「率谷(そっこく)」と「角孫(かくそん)」がある耳の上、そして「和びょう(びょうは摎の手へんを骨へんにした字)」をマッサージする場合は両手を軽く握り、薬指と小指の第二関節をツボに押し当て、グリグリと10回程度動かすのがポイント。こめかみへのアプローチは、小指球(手のひらの小指の付け根の盛り上がっている箇所)を押し当てて、後ろ回しで10回。「太陽(たいよう)」のツボを探るように、前後左右に移動させるのがコツだという。いずれも眼精疲労や不眠症に効果があると言われているが、実際にもんでみると納得、視界がスッキリした印象を受けた。
他にも、ストレス解消や免疫力アップにつながる頭蓋骨マッサージを極めたい御仁は、寺林氏の最新著書「ストレスとりたきゃ頭蓋骨をもみなさい」(アスコム刊)を一読いただきたい。
「よく首回りが疲れたから首をマッサージしてほしい、という患者さんがいますが、首や肩を部分的にもんでも、なんとなくスッキリしない、ということがあるんです。これはマッサージによって筋肉はほぐれても、頭の疲れが抜けていないから。我々人間はあらゆる瞬間で頭や目を使い、それを酷使しています。しかも、脳の筋肉はどこの筋肉よりもストレスを受けやすく、コリやすい。そこが疲労し、硬くなり、血行が悪くなればトラブルが生じるのは当然のこと。そんな時にこそ、頭蓋骨マッサージはおすすめです」
体調不良でせっかくの正月を台無しにしないよう、セルフケアでしっかり対処しようではないか。