スポーツ

武一族「天才騎手のスパルタDNA」(5)ピークを過ぎた馬が「一変」

 デビューからわずか3年目にしてジョッキーの頂点に立つ武豊。次々に記録を更新する天才の足跡は、競馬史に名を残す名馬との出会いでもあった。その一方で、日本の競馬だけでは満足せず、世界に目を向ける日が来る─

「栗東トレセンで初めて取材した時、坊主頭から後光が差している感じがした。この新人はきっとすごい騎手になると思った」

 武豊(43)との出会いをこう振り返るのは、関東のスポーツ紙競馬担当記者。

 その予感は当たる。88年、デビュー2年目にスーパークリークで菊花賞を勝ち(初GⅠ勝利)、その翌年、全国リーディング首位と快進撃を続けた驚異の新人は、90年有馬記念ではスーパーホースとともに、ファンの喝采を一身に集めることになる。

 第2次競馬ブームの主役だったオグリキャップ。その年の春、豊はテン乗り(初騎乗)の安田記念で勝っていた。その後は(別の騎手騎乗で)凡走が続き、鞍上に再び豊が指名される。競馬ライターが証言する。

「オーナーが代われば主戦も代わり、GⅠを連闘で使われるとか、とにかく話題には事欠かない馬。ただ、豊が有馬記念で乗った時は、競走馬としてのピークはとうに過ぎていました」

 豊自身も調教をつけて、その衰えっぷりに驚かされる。ところがそれをレースで一変させた。

「道中は気持ちよく走らせる」ことに徹して、4番人気の低評価を覆してみせると、中山競馬場はオグリコールに包まれた。豊はのちにこう述懐している。「有馬記念を勝てたのはうれしかったが、それ以上に「すでにGⅠを何勝かしてリーディング首位になったといっても、あのレースでファンやメディアの評価が変わったのを感じました」

 前出・競馬ライターも「すでにGⅠを何勝かしてリーディング首位になったといっても、『いい馬に乗せてもらっているからだ』と言う関係者も少なくなかった。それが有馬でのみごとな乗り方を目にして、悪く言う者はいなくなりました」

 怪物伝説を生んだ芦毛馬と若き天才ジョッキー。豊は2戦乗っただけだったが、そのどちらもが惨敗後の勝利。騎手として確かな感触をつかむのは当然だった。

 そして91年には、史上初の親子3代天皇賞制覇の記録を残した(父メジロティターンが82年天皇賞・秋を、祖父メジロアサマは70年天皇賞・秋を制覇)メジロマックイーンの手綱を取ることになるのである。

 新馬デビューが遅く、春のクラシックに出走できなかったマックイーンは菊花賞を勝ち、古馬になった91年から豊とコンビを組む。菊花賞の騎手は内田浩一だっただけに、この(天皇賞の)一件でも「豊は強くなった馬を横取りする」とバッシングされたが、コンビ初戦の阪神大賞典と2戦目の天皇賞・春を完勝し、批判を一掃した。

 その年の秋、天皇賞・秋で2連覇を狙うが、そこで「事件」が起きる。スポーツ紙デスクが言う。

「記者席から望遠鏡でレースを追っていても見えづらいところでの出来事。審議ランプがついて、対象になったのはあそこだな、と思った程度です。『これはただ事じゃない』と感じたのは、レースからだいぶ時間がたってからでした」

カテゴリー: スポーツ   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
大谷翔平「3度目のメジャーMVP」でもかなわない「凱旋帰国」の高すぎるハードルと「出禁」問題
2
大谷翔平「MVP受賞映像」で「真美子夫人の妊娠説」が噴出したワケ
3
なんだこりゃ!岡田将生の電撃結婚を「完全スルー」した「めざましテレビ」の担当は元カノ鈴木唯アナ
4
東京ドームで観客半分の「プレミア12」にサッカーファンが「シラケる」挑発バトル
5
マイルCS大的中の馬券師が断言!ジャパンカップ「勝つのはドウデュース以外の日本馬」「買える外国馬は1頭だけ」