昨年11月のキューバとの親善試合で先発し、2回を1安打無失点、4奪三振と好投した澤村拓一(24)は、その投球スタイルで高い評価を得た。
速球に強いキューバの強力打線に対し、首脳陣の期待どおり、変化球を多投して翻弄したのだ。
巨人では、原監督から出された今季の抑え転向構想に一度は「先発一本でやりたい」と難色を示していたものの、一転、「結果を残してこそポジションを取れる」と柔軟な姿勢に変化した。
その背景にWBCがありはしないか。
WBCでは投球数の制限があるだけに、先発だけではなく、第2先発、中継ぎ、抑えと役割は多くなるからだ。澤村には、そのどれにも応じられるのではないかと期待が高まっている。
プロ入り前から、同世代を「田中、前田世代」と話し、若くしてプロの一線で活躍する2人をリスペクトしてきた澤村。
「早く彼らに追いつきたい」
と筆者に語っていた2人と同じ舞台に立つチャンスを得て、このオフの自主トレでも快調だ。
「今年は、去年よりも一昨年よりも動けている。まっすぐも変化球も手応えを感じるし、体の状態はいちばんいい」
と成果を話し、WBCでの使用球で遠投を行うなど、対策も講じてきた。
最終メンバーに残れるかどうか、実績では当落線上と見られる澤村だが、持ち前の精神力の強さで、侍の一員として活躍する可能性は十分にあるだろう。
さて、年が明けて、参加各チームの戦力も明らかになってきた。過去2度の大会で、いずれも日本に敗れて世界一を逃した因縁の韓国はもちろん、名将トーリ監督を迎えたアメリカも野球母国の威信と大会開催国の意地にかけて、今度こそ頂点を狙おうという意気込みが強い。
その他にもベルトレ(レンジャーズ)、エンカーナシオン(ブルージェイズ)らを擁し超強力打線となるドミニカ共和国、昨年のア・リーグ三冠王カブレラ(タイガース)、ワールドシリーズMVPのサンドバル(ジャイアンツ)を有するベネズエラ、そしてカナダ、プエルトリコなどもメジャー選手を多く含み、準決勝、決勝で対戦することになれば侮ることはできない。
しかも、今回は第1ラウンドからキューバと同組になったことで、もしかすると過去2大会以上の激戦になる可能性が十分にある。
それでも侍ジャパンはひたすら頂点を目指すのだ。
次週も、主力候補たちの静かに燃えたぎる3連覇への咆哮をお届けしたい。